男が恋愛市場に出ない理由は、
そもそも9割の男子が学生時代に死んでいるから
山田:男って何かというと「ガラスの10代で、プライドモンスターで、自己防衛のために生きている」みたいになりますよね。
さっきのギャルモンスター問題と同じなんですけど、擦れ違いざまに女の子にクスクスと笑われて「きもい」と言われる。
これだけで、男の子は死にますからね。9割ぐらいの男たちは学生時代に殺されているんです(笑)。
その後遺症に苦しみながら、恋愛市場を生きろって言われても「俺、ちょっと無理ですわ」ってプライドが高くて繊細なゆえに、どうなるかというと、負けないために試合に出ないことを選択していると思いますね。
岡田:モンスター化したイケメン以外の9割の男性は、試合放棄?
山田:そうですね、一旦試合放棄していますね。
その試合放棄したやつらをいかに恋愛市場に引き戻すかということが、恋愛市場の流通を増やす問題においてポイントになると思いますね。
あと、僕、友達にヤンキーが多いんですけど、ヤンキーメンタリティというのは、威嚇の文化なので、「舐められたらやべぇ」と、言語が違うんですよ。
「つうかヤバくねぇ」「いいじゃんいいじゃん」「なんだよブス!」という言語感覚で自分を守っている連中なんですよ。なので、案外、小心者が多くて、中身がないやつが多い。
岡田:モンスター化した男たちは必ず不毛な男同士の戦いをしてしまうという。
山田:そうですそうです(笑)。
かつてのキングは、いつまでもキングじゃないこともあるんだよというところで、9割の地獄を見てきた人は少し救われてほしいなと思いますね。
そして、デスクトップの前からちょっと立ち上がってほしいなと(笑)。
岡田:それで、現実のギャルはどうなっていったんでしょうか。
山田:ギャルはもう終わったと思っているんですよね。
自分たちの性が商品化されることを、どっかで何かで武装してバロック化して、ヤマンバとかになっていくという流れは、一つの抵抗だったような気がします。
あれは、社会が大きく崩壊していくときに、損ばっかりしていた女の子たちの叫びが表出したのかなと。
その後に、どうなるかと言うと、エビちゃんの登場があるじゃないですか。
かわいいっていうところに掴まれば、わずかしかいない高収入の男を掴まえられるんじゃないかという幻想は2007年ぐらいから始まっているという気がすごくします。
そこで、ギャルたちは「かわいい武装」に転換して、読モになっていく。
でも一方で、男たちは読モ化した女性たちをおびえているんです。
合コンに行っても俺たちは戦えないな、最初から戦争に行くのはやめようとなっているのはちょっと残念ですね。
岡田:もしかして、AKBが基本的に黒髪でなければいけない理由っていうのもこれ?
山田:そうです!ヤンキーが怖いからです(笑)。
それで、スクールカーストによって何が起こったかというと、学校時代に楽しくなかったから、取り返したいっていう思いがあらゆる文化の中に入ってきていて。
エヴァンゲリオンもそうだと思うんですけど。ほとんどのコンテンツが「本当はこんな学校生活を送りたかったんだ」っていうエッセンスが入ってきている気がしますよね。
僕はAKBをあんまり知らないんですけど、たまたまテレビをつけたらAKBのライブがやっていたんですよ。岡田さんは見たことあります?
岡田:ない(笑)。
山田:セットに校舎があるんですよ(笑)。
それで、校舎までに道が3本くらいあって、メンバーが制服を着て自転車で会場の中を進んでいくんですよ。
最初は「キンコンカンコーン」でAKBのメンバーがガンガン入ってきて、神7の一人が途中で転ぶんですよ。
そうすると、神7のもう一人がやってきて「ほらほら、遅れちゃうよ」っていうところからスタートなんです。「失われた学園生活をさぁここで取り戻してください」っていうショー(笑)。
岡田:でも、ディズニーランドもそれと似たようなことをやっていますよね。
大人社会を否定しないフリをしながら、成長を否定している。
就職するのは可哀想なことでいつまでも学校生活が続くことがよいこと、だと。
大学を卒業すると就職するのではなくて、大学院に行くという道はないのかなとか。30前になった女性が急に留学したくなるのも全て成長することの否定があるじゃないですか。
80~90年代のオタク文化でよく言われた、「大人になることへの否定」ではなくて、もうちょっと深刻なものを感じますね。
なので、ディズニーランドにしても、AKBにしても、成長することが損だって、夢が失うことだと思ってしまう。そんなにみんな大人が嫌なんでしょうかね。
山田:いいことないと思っているんじゃないですかね。
結婚にもしんどいことしか想像できないから、今の男の子にデートの冒頭で結婚を匂わしたら、逃げるんじゃないでしょうかね。
岡田:なんで逃げるんだろうね。
山田:その責任の重さじゃないですかね。
僕は、市場化したというのが大きいと思いますよ。その上で、結婚は損か得かというのをすごく考えているじゃないかなと。逃げ場がない感じですね。
【後編につづきます】
Text/AM編集部