流行っちゃう恋心
ある特定の期間だけ、特別に恋をしてしまった経験はあるか? 学生時代で例えるならば、席替えから席替えまでの期間。ワンクールに満たないくらいの期間だけ、熱烈に思いを寄せたこと。大抵それは、長期休み前に起こる。定期テストが終わってホッとして、休み前でなんか浮かれてて、今までなんとも思っていなかった斜め前の男子、リンクと突然気が合う感じがする。なんか凄い合うかも、てか筆箱のセンスいいな。え待って。よく見たら目綺麗じゃない? 手大きくない? 一度始まったトゥンクは止まらない。暴走する心臓を抱えながらもどうしていいかわからなくて「いつもより話しかける回数を増やす」程度の地味なアプローチに全力を注いだ。そうしてあっという間に学期は終わる。休みの間、最初のうちはリンクのことばかり考えるけれど、次第に忘れていく。そうしている間に塾の夏期講習が始まって、そこで知り合った他校の男子、タウロが気になる。気持ちは完全にそちらを向く。
ここまでの一連を、リンクは何も知らない。そして迎えた始業式。リンクは「終業式の時点での仲の良さ」のまま声をかけてくるだろう。しかし私の気持ちはもうタウロの方を向いているのだ。なんでこのリンクとかいう奴が、ここまで親しげに声をかけてるのかわからない…と言いたいけれどわかる……私のせいだ…私がリンクに凄い話しかけてたからこんなフランクに「夏休み何してた〜?」とか言ってくるんだ…え待って。てことはリンクには私の気持ちバレてたってこと? そんでまさか、今も私がリンクのこと好きだと思ってるってこと? は、ざっけんな。好きじゃないわ別に。てかぁ〜? 言ったら休み前の時点でも別に好きとかではなかったかんね? なんかちょっとアリかもとか思っただけで好きとかじゃないし調子のんな。やだ〜なんか凄いやだ〜! こうして自意識は暴走し、無事パーヤはリンクに冷たくするのだ。
あまりにも、知っている感情…自分も犯したことのある罪……このことを夫に話すと「そういうことだったのか」と小さく呟いていた。あぁ…君も誰かのリンクだったのね…私たちきっとみんな、パーヤとリンクだったことがある。恥ずかしいやら申し訳ないやらで、今すぐ5センチ×5センチの立方体になりたいけれどそうはなれないのでこうして反省する所存です。ごめんねリンク。
それにしても、メインストーリーに関係ない部分でここまでキャラクターの心情を作り込んでいるゼルダの伝説、マジでどうなってんすか? 作り手の皆さん、本当にありがとう!
TEXT/長井短
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