女性の身体に名前は書けないから

小中学校の頃は上履きや文房具、絵の具バケツなど全ての持ち物には名前を書くのが当たり前でした。幼稚園時代に至っては、パンツにまで名前を書かされていたよう記憶しています。その習慣が、学生生活を終えた直後もしばらくは抜けないのでしょうね。「持ち物には名前を書くべき」「そう先生に教えられた」と。

しかし一線を越えた相手女性の身体に名前を書くわけにはいきません。「A子は俺のオンナ!」と思っていたとしても、生身の人間に油性ペンで名前を書くってどうなのだろうか、とさすがに踏みとどまるわけです。でも名前は書かなきゃ。だって学校でそう教わったもん。

そこで、名前を書く代わりにキスマークをつけるのでしょう。ワンコのマーキングと一緒かもしれませんね。お散歩中のワンコは、電信柱にオシッコをかけることで、「ここはオイラの縄張りだよ」と、近所のワンコたちに知らしめようとします。人間のキスマークも似たようなもんかと。

加齢と共にキスマークをつけなくなるのは…

しかし社会人生活が長くなると、徐々に学生時代の記憶は薄れてゆきます。そのため、アラサー近い世代になると、キスマークをつけようとは思わなくなるのでしょう。そう、決して吸引力が衰えたわけではないのです。

なお、私たち女性の場合は、「名前を書く」ではなく「名前の付く関係性」に意識が向かうのでしょうな。名前の付かない曖昧な関係ではなく、「彼氏とカノジョ」「恋人同士」といったふうに、関係性に名前が付くことを重要視します。

セックスフレンドもイチオウ「名前の付く関係性」に該当しますが、そうじゃなくて! ちゃんとした名前であることが大事なのでしょう。上履きや文房具、絵の具バケツに「ミカリン」などとあだ名を書きはしませんでしたから。「きくちみかこ」と、正式な名前を書くのが当たり前でしたから。正式な関係性を意味する「彼氏カノジョ」「恋人同士」という部分にこだわりたいのが乙女心ってやつなのでしょう。

Text/菊池美佳子