友人の決断を受けて、病院へ
それから数日後、キャバ嬢の友人からまた電話が来た。「男と連絡ついたんだけど、半分お金出すから堕ろせって言われたんだよね〜」と話してきたので、私は「◯◯ちゃんはどうしたいの?」と、内心彼女にすがる思いで尋ねてみた。
すると、「産まないかな。相手は結婚する気ないし、1人じゃ育てられないと思う。実は妊娠するの1回目じゃないから、親にも言えないし。タイミング的に違うかなって」こう返ってきた。
結局、この数日後に彼女は一人で中絶手術を受けに病院へ行き、男とは縁を切った。
ついに、考えることにすら疲れてしまった私は、彼女の選択をただ真似て、中絶手術を受けることを決め、また病院へ足を運んだ。
今、振り返ると、正気の沙汰ではなかったと心底思う。
診察室に入り、内診をしてもらう。
そのとき、モニターにそら豆のようなフォルムの生き物が映るのが確認できて、思わず目をそらした。
ようやく決めたのに、気持ちが揺らぎそうな自分に気が付いたからだ。
そら豆の観察が終わり、大仁田厚似の先生から「産めないの?なんでよ?」と尋ねられた。「こっちが知りてえよ!」と史上最低の逆ギレをしてやりたい気持ちをグッと抑えて、「産んだら育てなきゃいけないじゃないですか。不安なんです」と答えた。
すると、大仁田は鼻で笑いながら「産んだら育てなきゃいけないか…それが分かっているなら大丈夫だよ。不安なのはみんな同じだし。とりあえず3日後に手術の予約を入れておくから、キャンセルするなら前日までに電話して」と言った。
なんで産めないのか、ひたすら考えた
「産めないの?なんでよ?」
「本当、なんでだろうね」
自問自答を繰り返しながら家に帰り、遮光カーテンを閉め切った暗い部屋で一人「なんで産めないのか」ひたすら考えた。
散々、遊んできたので「もっと遊びたかった!」という思いは全くなかったが、キャバ嬢の友人の言う通り、「タイミング的に違うかな」というのは、大変無責任ながら私にもあった。
ならば、いつ頃ならタイミング的に良いのか?
25歳?28歳?そう言われると分からない。このままいけば、28歳のときにもまた「タイミング的に違うかな」とかアホなことを抜かすのではないだろうか?
それに、「そろそろ良いタイミングだ!」と思った頃に、パートナーがいるかもわからないし、歳を重ねて、妊娠・出産が困難になっているかもしれない。
その他にも、私が出産を踏みとどまっている理由も書き出してみたが、超のつくくだらなさだった。
「友達との関係性は大きく変わるだろうか?」
そもそも、私が結婚・出産するぐらいで動じる奴なんていないし、大きくマイナスに変わってしまうような脆い友人関係を築いてきていません。
「妹尾ユウカデキ婚ワロタw」とかいう奴出てくるよね?
はい。当然出てきますが、そういう人は私がどう生きても「ワロタw」って言いますよ。それに、デキ婚は不貞行為でもなんでもないですよ。
「本当は子ども産む前に結婚式したかったんじゃないの?」
どっちでもいいよ。子どもができる1年前に戻っても、ヴァージンロードをヴァージンでは歩けないし。幸せならオッケーです。
「出産も育児も不安じゃないの?」
当然不安ですが、私が人類初の出産ではありませんし、育児なんて皆初めは初心者ですよ。
こんな風に1つ1つ自分の抱えている不安に対して、冷静かつ前向きなアンサーを夜が明けるまでし続けた。
そして、手術前日の朝になってようやく病院へキャンセルの電話をかけた。
電話を切ると、そこにはもう迷いは一切なくて、部屋と未来に明かりが差し込んだ。