いい女に擬似的に殺されたい、男の願望

ちなみに先輩と彼女は数か月で破局。ふたりともモテる人なので、しばらくするとまた別の恋愛をはじめていた。先輩が彼女をどんな理由で好きになったか聞くことはできなかったが、彼を含む男子たちが卒業式の後に「どんな女に殺されたいか」という話題で盛り上がっていたところに、私はその重大なヒントをつかんだ気がした。

男がみんなMなのかどうかはいまだにわからないが、もしかしたら、男はみんな疑似的に死にたがっているのではないか、と思うことがある。

たとえばセックスでオーガズムに達すると、相手の男に「オレもそんな体験してみたい」と言われることがままある。一般的に女性のほうが男性より長く絶頂感を味わえるとか、深い快楽が得られるとか言われるが、それが羨ましくて、憧れるそうだ。「男の射精はすぐ終わっちゃうから」と彼らは残念そうに言う。

フランス語でオーガズムを「小さな死」と呼ぶらしい。たしかにあの長い、ふわふわとした絶頂感は、まさに死に近い。男は女の「小さな死」に憧れ、自分も小さく死ぬような体験がしたい、できたらいい女に疑似的に殺されたいと、実はそう願っているのではないだろうか。

どうせ殺されるなら、こんな女に。そう思われるのが、私の目指す「圧倒的なモテ」である。夜な夜なモテ小技を仕入れて満足している場合ではない。ただし、もちろん安易に男のすね毛を焼けばいいわけではない。修行は続く。命の限り。

Text/雨あがりの少女
初出:2021.07.14