拝啓、「え、わかる!」で自我崩壊する逆ハー錬成女子さま /長井短

最近Netflixで『らんま1/2』を見てるんですが、あかねってあんなモテてたんだね。乱馬と許嫁だってことが羨ましすぎてそれ以外の情報をすっかり忘れてた。そうか…あかねってそもそもモテるん…いいなぁ…人生で一回くらい、とんでもない逆ハーレムを体験してみたいもんでした。実際しんどいのかな? 私には経験のないことなのでわかりませんが、逆ハーレムを錬成しようとしている女には覚えがあります。皆さんの周りにもいませんでした? 逆ハーになるために努力している女の子。今回は努力し過ぎてバグってた彼女たちのことを思い出すコラムにしようと思います。

モテ美ちゃん秘テクニック

逆ハーレム…それはご都合にご都合を重ねたフィクション…でも、10代〜20代前半って色々バグっちゃってるから、あれがフィクションかわからない時があるんだよね。その証拠に、私のそばにもいました。その子の名前をモテ美ちゃんとしましょう。
モテ美ちゃんは、奇抜なファッションでもなければ、流行り物を追いかけすぎているわけでもない。品のいい茶髪に、毎年絶対販売される小花柄のワンピースをよく着ている女の子。彼女と私は共通の知り合いがいて、一時期よく一緒に飲む間柄だったんだけど、とても仲が良いわけでも悪いわけでもない、淡白な関係性だった。趣味もそんなに合わなかったし、正直私はモテ美ちゃんに対してあんまり興味がなかったのだ。しかし…モテ美ちゃんはある時から私の視線を独占する。それは、飲み会に男の子が来た時であった….。

「え、私もそれ好き!」

狭い居酒屋の座敷席。斜向かいから1分おきに聞こえてくるこの言葉。「わかる!私も!」「私も好き!」「え、わかる!」モテ美ちゃんは、初めて会う男の子のことをわかり続けているのだ。

「俺結構一人で飲むのとか好きでさ」
「え、わかる」
「家にウイスキーとか置いてて」
「え、私もウイスキー好き!」
「すぐ飲みすぎちゃうんだよね」
「え、わかる」

この時点では「あ〜すごいあの二人気が合うんだなぁ」くらいに思っていたけれど、その後解釈違いに気づく。

「僕飲み会は好きだけど家ではあんま飲まなくて」
「え、わかる」
「人と飲むのは好きなんだけど一人だとあんまで」
「私も〜飲み会が好き」
「お酒何好きなの?」
「なんでも!」

おや…おかしいぞ…わかり方がエグい。これはとてつもない女なんじゃないかと私の意地悪センサーが赤ランプを点灯。以降モテ美ちゃんの会話に耳を傾け続ける肉塊として飲み会を過ごした。