スピリチュアルも心理療法も
自分の心を整理する意味では同じ!

田房

わたしは2年くらい前に、こういった心理療法を片っ端から受けてみようと思ったんですよ。専門家の人はハシゴしないほうがいいって言うんだけど。

精神科のクリニックって、たまに「職場の先輩OLか!」みたいな医者がいるんですよ。こっちはめちゃくちゃ悩んできてるのに、「え~、それさあ、旦那さんに相談すればよくな~い?」「悩むことないと思うけどなあ~」みたいな(笑)。

まんしゅう

本当にそんなトーンなんですか?(笑)

田房

そう!だからいろいろ受けてみないと自分に合った方法もわからないなと思って。詳しくは『呪詛抜きダイエット』(大和書房)という本に描いたんですが、ハシゴした中でゲシュタルトセラピーというセラピーに出会えて、いまも夢中です。

もちろん、きちんと学問として科学的な根拠のあるセラピーなんだけど、自分の心を整理するという意味で、わたしにとっては宇宙と交信したりUFOを呼んだりするのと同じことをしてるんじゃないか?って思うときがあります。

――さらにイベントでは、客席からの質問に答える一幕も。
「スピリチュアル的なものにハマるようになったきっかけはなんですか?」という質問では、2人のスピリチュアル遍歴の意外なルーツが明かされました。

まんしゅう

わたしは、もともと祖母が迷信やおまじないをすごく信じる人だったんですよ。風邪を引くと、ビニール袋にコホンコホンと咳を入れて、小銭と一緒に結んで道に放り投げておくんです。そうすると、小銭を拾った人に風邪がうつるって言って(笑)。

田房

うつさないとダメなんだ(笑)。

まんしゅう

うちの母親も、父親と結婚するときに「鬼門からくる嫁はだめだ」って祖母に言われて。結婚前に1年間別の場所に住まされて、「鬼門除け」をしてから結婚したっていうくらい徹底してましたね。

田房

生粋だ!

まんしゅう

そういう家系なので、わたしも方位とか日にちをすごく気にするようになりました。

田房

わたしは、付き合っている人に自分の銀行の口座をオンラインで管理されていたことがあって。別れて4年後くらいに、ひょっとしてまだわたしの口座の収支を見ているんじゃないかと思うできごとがあったんですよ。全身から血の気が引いてパニックになってしまいました。

mixiのパスワードも同じだったので、4年間mixiの恥ずかしい日記の下書きとかを読まれていたかもしれないって思ったら、死にたくないですか!? たぶんおそらく絶対見られてた、という確信はあるんだけど、証拠がないから訴えることもできないし、訴えたところで法的には別に被害はないわけじゃないですか。どうやって心を収めればいいのかわからなくて、猛烈にテンパってしまったんです。

まんしゅう

それはイヤですね……。

田房

本当に慌てふためいて、でもその気持ちをどこにもぶつけようがない。そのとき、“ナザール・ボンジュウ”っていう災いをはねのける、目玉の形をしたトルコのお守りがあることを知って、藁をもすがる思いで買ってきて。それを握ると、本当に災いが窓の外へ飛んでいってる気がして、不思議とラクになれたんです。

むしろ、それでしか精神を安定させられなかったとも言えるけど、心の乱れやざわめきをナザール・ボンジュウにいったん預けることができた。それまでは、スピリチュアルとかハア?って感じだったんですけど、それからはパワーストーンとか“自分の外にあるもの”に不安を預けることを覚えましたね。

――精神世界に惹きつけられ、確実に影響を受けながらも、決して我を忘れるほど盲信したり、他人に押しつけたりはしないまんしゅうさんと田房さん。
スピリチュアルの非科学的なトンデモぶりをどこか笑い飛ばしながらも、心の拠り所としてうまく付き合っているように見えます。

抱えきれない恐れや不安を、パワーストーンやお守りに託したり、向き合いたくない感情や境遇の原因を、前世や精霊に求めたり。
わたしたちは、一人では受けとめられない内面のもやもやを、いったん自分ではコントロールできない“外部の存在”や“大きな力”のせいにしてみることで、かえって状況を客観的に整理し、心の安寧をはかることができるのかもしれません。

みなさんも、お2人のように自分を安心させるためのツールとして、適度に自覚的にスピリチュアルを取り入れてみてはいかがでしょうか?

Text/福田フクスケ

まんしゅうきつこ
埼玉県生まれ。2012年に開設したブログ「オリモノわんだーらんど」で注目を集め、現在は漫画家・イラストレーターとして活躍。『アル中ワンダーランド』(扶桑社)、『ハルモヤさん』(新潮社)が好評発売中。WEBマガジン『ドアラジオ』に『まんしゅうきつこのリフォームワンダーランド』を連載中。

田房永子
東京都生まれ。2012年に刊行された『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)が大きな話題となり、『ママだって、人間』(河出書房新社)、『男しか行けない場所に女が行ってきました』(イースト・プレス)など注目作を次々刊行。『本当にあった愉快な話』(竹書房)に『キレる私をやめたい』を連載中。

※2015年9月16日に「SOLO」で掲載しました