悪い男に巻き込まれるのは危険だからパンをこねよう

これまでのことをまとめると、恋愛力は陶酔力、陶酔力が低いと悪い男に引っかかりやすい、ということになる。しかし絶望することはない。性悪の男性との恋愛にどっぷりはまった結果、瀕死の状態から立派に更生し、ほのぼの恋愛を楽しむフェーズにシフトした賢い女性たちの話もたくさん聞く。

危険なものをうまく回避できればそれに越したことはないけれど、危険なものにはやはりそれなりの魅力もあるわけで、夢中にさせる何かがある。道半ばでそこから手を引くのは非常に難しい。もう限界と自分が思えるところまで、とことんのめり込むより他ない。痛い目を見てもなんとか生還して、次に同じ失敗をしないよう学びさえすればそれでいいのだ。

おひとりさまというだけでやれ恋愛しろ、婚活しろと周りから口うるさく言われる厳しい世の中である。先に紹介した幸せな二人は端的に言って羨ましいが、あおられるままに恋愛力、陶酔力を高めようと思ったところでそう簡単にはいかないもの。多少の背伸びをしながら自分を更新していく作業は自分が退屈しないために不可欠な作業だが、そうかといってあまりに不自然なことは続かない。

相手を必要とするものは、基本的には全てタイミングだ。巡り合わせのない場合には私は私と、そう、たとえばパンでも焼いて、のんびり構えていればいいのではないか、と思う次第である。

Text/紫原明子

初出:2017.06.24