世間は「現実を見ろ」と言うけれど

良香は、絶滅した動物のことをネットで調べるのが好きという、素敵な趣味を持った女の子である。いいじゃん、私も絶滅した動物は大好きだ。ちなみに好きな絶滅動物はグリプトドン! なぜファッション誌は幸せな新婚夫婦へのインタビューと婚活の話ばかりで、絶滅動物を特集しないのか。気を利かすことは大切だけど、空気が読めることだけがそんなにポイントが高いのか。

「趣味やアイドルとは結婚できないんだから、現実を見なきゃだめ」とファッション誌は煽る。たしかに間違ったことは言ってない。だけど、恋愛も結婚も、みんな同じタイミングで同じようにやらなければいけないものではない。アラサーだからというのではなく、10代でやったっていいし、40代や60代でやったっていい。
「現実を見ろ」というが、むしろこれからの時代、私たちがこの現実を変えていかなければならないんじゃないか。良香みたいな女の子が負い目を感じずに、心ゆくまで楽しく絶滅動物のことを語れる未来を、私は作っていきたい。

それはそれとして、『勝手にふるえてろ』は恋愛経験ゼロ〜少なめの女性は共感できるポイントがたくさんあるので、思い当たる節がある人は小説版でも映画版でも、ぜひ手にとってみてはどうか。わりと悶絶します。

次回は<『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んで。大切な人にも伝えたい「それは違うと思うよ」>です。
今回のテーマは、韓国の女性の姿を描く話題作『82年生まれ、キム・ジヨン』です。この作品のなかで描かれている女性差別は、今の私たちの社会にもあるものです。これから女性が生き抜いていくために、目指すべき女性像とはなんでしょうか。ひたすら「愛される女」を目指す時代は終わるのです。