大人の趣味のあり方とは

 と、ここまで散々怖い話をしてしまったけれど、実際、30代独身の私の生活はどうか。私はまだ30代前半なので、後半以降のことはまだよくわからないのだけど――今のところ、若い頃と比べて孤独が深まったという感覚はあまりない。
友人たちとも未婚既婚子持ち子なし関係なく会っているし、読書も旅も映画も、10代20代の頃と変わらず楽しんでいる。 もしかしたら友人たちとは、今後お互いに生活環境が変わって、疎遠になることもあるかもしれない。しかし後者の非リア系趣味に関しては、飽きるどころか年齢を重ねてますます楽しくなってきているので、あまり心配していない。

 私もまだ模索中なのだけど、大人の非リア系趣味は、問題から目を背けるためのものよりも、問題と向き合うためのもののほうがいいかもしれないと、今ぼんやり考えている。
「寂しい」と感じたら、寂しさを紛らわす明るくて楽しい物語よりも、むしろ徹底的に孤独と向き合っている物語に触れる。過去の後悔も、誰かへの嫉妬も、許せない怒りも、ありがたいことに映画や小説はいくらでも描いている。
読むのに骨は折れるけど、古典文学はこの点やっぱり手堅くいろいろな問題をカバーしているので、苦手な人でももう一度挑戦してみてほしいと思う。

 年齢を重ねることを私はけっこう楽しんでいるんだけど、それはいろいろな経験をしてたくさんの感情を味わうことで、年々「わかる」物語が増えていっているからだ。年をとることは、新鮮さを失わせるだけではない。経験によって「わかる」ものが増え、10代より20代より、世界が豊かになっていく。

 「趣味がない独身問題」は、私の中で引き続き考えたいテーマだ。でもとりあえず今日の結論としては、今、それなりの年齢で孤独を感じている人に、ぜひ意識してみてほしいと思う。趣味を通じて問題を紛らわすのではなく、問題と向き合ってみることを。30代以降の趣味は、そうすることでしか、生活を豊かにはしないだろうから。

次回は<恋愛関係は「密室」だから、彼の真意がわかるのはあなただけ>です。
家族の中でだけ通用するような独自のルールがあるように、恋人間の関係も言い方を変えれば「密室」。閉じた関係の中でしかわからないロジックは、世界が「正しさ」だけでは通用しないことを教えてくれます。