熱海日帰り逃避行

重厚な石たちに囲まれた、でもどこかあたたかなイメージの店内は清潔に保たれ、カウンターにはママが活けた大きくて美しい花が。

熱海日帰り逃避行

思わず目を惹かれ、花の名前を尋ねました。すると、
今日はコデマリよ。本当に花が好きでね、その時の直感で決めるの。季節によっても気分によっても欲しい色は違うでしょう?」と笑顔で教えてくれました。

熱海日帰り逃避行

「少し前にもね、あなたの本を見て、遠くから来てくれた人がいたわよ。それで私のことを気に入ってくれたみたいで、またその後も来てくれたのよ。嬉しかったわぁ」と、ママは訪れる人たちのことをよく覚えていて、とても嬉しそうに話して下さいました。

熱海日帰り逃避行

尽きない会話の中には、ぴりっと身の引き締まる人生論やこんな話も。
「夏でも冬でもね、まず起きたら部屋の窓を全部開けるの。海が見えるから、今の季節に人が歩いていると、あぁ昨日よりあたたかいんだなって知るの」と情景がくっきりと浮かぶような、季節に寄り添った暮らしをしているママを羨ましく思いました。
しかし、そんな気持ちを見透かされてしまったのか「でも観光で来るくらいがちょうどいいってこともあるかもしれないわよ。また来てね」といたずらっぽく笑うのでした。

1年中ほぼ休むことなく営業し、夕食をとる時間だけ店を閉めるそう。
ここを目指してくる人たちにいつまでも元気で出迎えてほしいと願い、駅までの夜道を軽い足取りで進むのでした。

※2017年2月17日に「SOLO」で掲載しました

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