実は「ネット右翼」ではなかった?

結論を言ってしまうと、本書は最終的に「実は父は『ネット右翼』ではなかったのではないか?」という答えにたどり着く。

ネットスラングを使っている、保守論壇誌が部屋にあった、女性蔑視や外国人差別のような発言をしていた――それでも「ネット右翼ではなかった」という答えにたどり着くのはちょっと意外な気もするが、人間はグラデーションで、そもそも白黒はっきりさせられるような存在ではなく、思わず嫌悪感を抱いてしまうような発言にも何かしらの理由があったりする。

本書がたどり着いた結論に対して「なんだか歯切れが悪いなあ」という感想を抱く人もいるかもしれないけど、しかし、人間とはそもそも歯切れが悪い存在なのだ。

「きっとこういう人なんでしょ」という先入観は、目の前の人物を曇らせる。昨今はそれがますます難しくなっていると感じることもあるけれど、本書は目の前の人を「人」として、対話を積み重ねていくべきだと改めて気づかせてくれるのだ。

Text/チェコ好き(和田真里奈)