「家族」への抵抗と、脱出

『観光』の中で、私がいちばん好きな作品は『闘鶏師』だ。主人公の女の子の父親は、ギャンブルの闘鶏で負け続け、家族を破滅に追い込んでいく。でも、まだ女子学生である主人公は、そんな父親をそばで見ていても何もできない。

この短編集に登場する家族は、いわゆる伝統的な家族でも、一般的な意味での“幸せな家族”とも違う。主人公たちはどちらかというと、「家族」からの脱出を試みている。でも「家族」からの脱出は、その否定ではない。むしろ、家族というよりは1人1人の人間同士として対峙するために、その枠から抜け出ようとしているように私には見える。経済的な、社会的な力を持たない若者たちが、抵抗し、脱出を試みる。その過程が、美しい風景描写や疾走感をともなって描かれるのが短編集『観光』だ。

「家族」が苦手な私は、ではどのような「家族」であれば受け入れられるのか。自分で物語を読み、また書くことで、今後はその姿を模索していけばいいんじゃないかなと思っている。そして行く先々で穏便な自己主張をしつつ、私が考えるほうの「家族」像に共感してくれる人を1人でも増やせたら、私の中では「勝ち」だ。

Text/チェコ好き(和田真里奈)