ダイエットに成功しても旦那をゲットしても幸せじゃない

もう一つ紹介したいのは、既婚者となったエリザベスが登場する『あの子はなんでもしてくれる』。この物語に登場するエリザベスは夫がいる上に、ダイエットに成功してちょっと痩せている。理想の体型も旦那もゲットしてさぞかし幸せに暮らしているのかと思いきや、エリザベスにもその夫にも、あまり楽しそうな雰囲気はない。それどころかエリザベスは、夫のPCの閲覧履歴に、太ったメイドが出てくるアダルト動画があるのを見つけてしまう。自分が決死の思いで削ぎ落としたあの贅肉はなんだったのかと、エリザベスの顔は凍りつく。

太っているのは悪いこと、痩せているのは良いこと……いや、そんなわけないよなと『ファットガールをめぐる13の物語』を読むと、改めて気づかされる。ぽっちゃり体型でいたときにナメられていた自分が痩せたからといってナメられなくなるわけじゃないし、最愛の夫は、痩せているエリザベスよりむしろ太っていたエリザベスといた頃のほうが幸せそうだった。そこには、「そのままのあなたでいいんだよ」という単純なメッセージがあるわけでもない。持って生まれた自分の体とどう付き合っていくかという、これはそういう小説なのだろう。だからやっぱり、加齢によって性的な目線に晒される機会が少なくなる自分を、嘆くのではなく肩の荷が下りたように思う私も、そんなに変わった考えはしていないはずである。 加齢に伴う外見の変化でも体型でも、自分の容姿に何かしら思うところがある人は、きっと本書を読んでみると、発見があるに違いない。

Text/チェコ好き(和田真里奈)