年齢を重ねるのはやっぱり楽しい

……と偉そうに言ってみたものの、実は、私はまだアントニオ・タブッキの作品の良さを本質的には理解していないんじゃないかと思ったりもする。別に若者ぶるつもりはないけど、とはいえ私は30代。おそらくこの短編集の真の良さがわかるのは、いろいろな人との別れ(それはときに死別を含む)を経験した後の、50〜60代なんじゃないかなという気がする。

独身が既婚者になっても、子供を産んでも、自分のためだけの趣味を続けることはできるし(出産12時間後だってそれは可能だ!)、30代の頃にはわからなかった物語をもっと深く理解できるようになるかも、という楽しみがある。だからやっぱり、年齢を重ねることについて、私はポジティブな気持ちしか持っていない。この先の人生に楽しみを作るという意味でも、『時は老いをいそぐ』はおすすめだ。あと、オタクはたぶん不治の病なので、一度罹患するとまじで死ぬまで治りません。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです