わかるとわかれる<2>

前回の記事、わかるとわかれる<1>の続きです。

何年も前に本で読んだ夫婦の話でした。
夫が妻に暴力をふるっている。
いつものように実家に逃げた妻が、突然彼を理解し、許した、
というところまででしたね。

続き、行きます。

・・・彼女がパーッと霧が晴れたように、
彼の病的な暴力の原因を理解し、
怒りも恐怖も恨みもすっかり氷解し、
彼を完全に許した、というのを読んだとき、私は

「ああ、ここからようやく、
二人は暴力のない関係をはじめられるのかなぁ・・・
よかったねえ・・・・」

と思ったのですよ。

だから、夫が実家に迎えに来たときに、彼女は心から喜び、
そして、新たな、そしてある意味、初めての、
健全なスタートを切るのだろう、と思ったのですよ。

あなたもそう思いませんでしたか?

ところが・・・!

ところが・・・・!!

彼女は迎えに来た彼に、晴れやかにこう言いました。

「私たち、離婚しましょう」と。

・・・え!!!!!

と私は衝撃を受けました。

そしてしばらく経ってから、

「なるほどなあ・・・・現実はこういうものなのかもなあ・・・深いわぁ・・・」

としみじみ思ったのです。

あなたは、どうして彼女が離婚しようと決めたと思いますか?

私はこの彼女の心の動きについて、何度も考えました。

そして今思うのは、
彼女は彼の暴力についてすべてが理解でき、すべてを許したとき、
初めて、起こっていた出来事の渦中ではなく、
離れたところから「全体像」つまり「真実」を見る
ことができるようになった。

だからこそ、彼との関係を卒業できたのではないか、ということです。

彼女はずっと、つらい目に遭わされ、彼を恨みながらも、
彼から離れられなかった。

愛なのか執着なのかわからない状態で
お互い傷ついていた。

その理由は、彼女の心が盲目だったからではないか?と思うのです。

いえ、盲目だったのは彼女だけではなく、きっと彼もです。

「わからない」から、いつまでも混乱の渦から抜け出せなかった
のではないでしょうか。

「わかる」ということは、混乱の渦の外に出ることです。

自分がいた渦を、外から見られるということです。

彼が暴力をふるう原因が腑に落ち、
自分と彼がどうしてあんなふうになっていたのかを、
正しく冷静に、距離をおいて見られるようになったことで、
彼女は、怒り、恨み、不安、混乱から解放されたのではないかなあ。

そして、もしかしたら彼女は、
「これだけ深いところに原因がある暴力は、簡単には治らない。
このまま一緒にいても、二人とも不幸なだけなのではないか」とわかった。
だから「それぞれの道を行きましょう」と晴れやかに思うことができたのかもしれません。

ここで一回別れて、またいつか出会い直せたとしたら、
そのときが彼らの本当の本当に新しいスタートなのかもしれませんね。。

ところで私は、夫を理解した奥さんが、
別れることだけが正解だと思っているわけではありません。

厳しい道のりになるとは思いますが、
別れずに、よりよい関係を築いていく道もあると思います。

まあ、どうするかはケースバイケースなのでしょうね。。
このエピソードでは、「離婚しよう」と決めたということです。

私たちは、「わからない」うちは、問題の渦に巻き込まれ、
ずっと悩んでいます。

だけど、そこになにが起こっているのかを正確に「わかる」ことができると、
やっとその渦から外に出ることができるのだと思います。

とことんもがいて、苦しんで、
少しずつ、そしてようやく「わかる」こともあれば、
本とか誰かの言葉なんかをきっかけに
「あ、そうだったのか!!!」と突然「わかる」こともあるでしょう。

最初に書いたように、
「理解」「一体」「融合」「融和」というと、
思わず「一つになって、ずっと一緒である」
のようなイメージを持ちがちだと思いますが、
実際の行動や起こることは、一見するとその逆が多いです。

またまた長~くなったのでここで切ります。
また続きをアップします。