家族としきたりと抑圧。(続き)
そのツケが、離婚率、失業率、進学率に現れてきます。それ以上に重いのが、外に出て自立しようとする子供たちへの負担です。子どもが「依存する集団」が大事である分、そこから出て行こうとする子どもにのしかかる、家族側からの経済的、精神的依存度と言ったらありません。
沖縄県内外に住む沖縄県出身者の若い男性20名ほどに話を聞いてきたのですが、家族との笑ってしまうほどのエピソードがてんこ盛り。
「県内の学校に通って、就職。実家から離れるため県内の離島に引っ越しのだけれど、親から『おじいの家を継ぐ人間がいないから、いずれあそこに住め』と言われた。祖父の家なんて行ったこともないのに!」
「都内に住んでいるのに、今でも母親が『宅急便の送り方』を聞いてくる。なぜ配達員に聞かないのか不明」
「上京して初めて旧正月に実家に帰ったとき、うっかり電話に出たら都内にいる叔母だった。開口一番『あらぁ、○○くん実家戻ったの~よかった、安心』……って戻ったわけじゃないし! そんなに不安ならお前が戻れ!」
コルシカも家族のもとに戻る男性が多いです。エマニュエル・トッドがその家族主義の種類を“内婚制共同体家族”と定義づけて語るように、男性によりかかる家族存在そのものが見えます。「親の権威は形式的で、兄弟は平等であり、男は全員親元に戻り、大家族を構成し、権威よりも慣習が重視され、女性の地位が低く、子どもの教育に熱心ではない」。
土地を離れた男の子どもに対する親戚一同からの、強烈な依存。
その不満を解消するための、「怠惰」の許容とマチズモ、そしてある種のナショナリズムとでも言える、「土地への誇り」。
自由になりたい沖縄の男たち
インタビューした「自由になりたい」と叫ぶ沖縄出身男性たちは、沖縄の生活にせよ、本土での生活にせよなんだか上手くいっていない原因が、家族だとうすうす気づいていながらも、小さいころから「家族が大事」と教え込まれた呪いなのか、そう思ってしまう自分に「罪悪感」を抱き、親離れが完全にできずに苦しんでいました。
「親は大事に」と思う気持ちはいいのですが、「依存する親」は危険すぎるし、それは年金問題と同じく上の世代が下の世代におんぶする世界。そして何よりも問題なのが、「いやだいやだと言っておきながら、実は親に依存している自分」から一生精神的に自立できないこと。
親から自立できない人間は、パートナーのことを幸せにできる個人にはなりえません。“幸せ”も家族に頼ることになるわけですから。新しく作るのではなく、古い家族にパートナーを巻き込むことだけしかできません。
まあ、それで幸せに本当になれるのなら男性はそれでもいいですが、自分の不満や生きづらさを解消しないままだと、その憤懣は弱い人間に向く現実があることをお忘れなく。 最高裁判所が各地裁に保護命令が出た数を集計したものと、総務省統計の人口と比べて朝日新聞が出した数値によると、人口あたりのDV発生率ワースト1が沖縄県。
10万人あたり27.8件。2位が奈良の23.4、3位が鳥取23.0、全国平均が11.0件を考えると、ダントツです。
コルシカでもDVが2010から2011年の間で、8%増になったことを首長が発表しました。
男の生きづらさだけで片付けられない問題になってきました。
さてさて、この時代、バンバン結婚し、どんどん出産し、ドシドシ離婚する、のどかな島のゆるやかな家族主義をどうするのか、これからの課題かもしれません。
失業率が高く、出生率が高く、離婚率も高く、所得が低く、男がマッチョ- 島と恋と結婚観(前編)
※参考文献
内閣府調査23年度版配偶者暴力相談支援センターにおける配偶者からの暴力が関係する相談件数等の結果について(平成23年度分)
20年分までの沖縄県による調査(https://www3.pref.okinawa.jp/site/contents/attach/18930/19genjyou.pdf)
地元沖縄タイムス
『Corse Net Infos l’actu gratuite en ligne』Violences faites aux femmmes : Une journée pour ne plus subir
Text/Keiichi Koyama
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