「彼に束縛されたい」「オナニーのオカズはレイプ妄想」などなど、実際にされたら嫌なのに(笑)、なぜか抱いてしまう「支配されたい」という欲望。
私たちはなぜ「支配されたい」と思うのか。
「乙女のカリスマ」として私たち女性の生き様を描き続けている作家、嶽本野ばらさんにお話しをうかがいました。
女性の支配妄想は「支配」じゃない?
―「支配」って、そもそも何でしょう?
野ばら:「強制的な力」を行使すること。支配そのものは悪いものではありません。「強制的な力」とは「ルール」に置き換えてもいいのだし。従属させられる者がそのルールは不公平過ぎると怒る時、支配は悪になる。
ところが、女性は不利なルールで縛られるのを好む場合がある。その場合、支配・被支配の関係性が逆転する。
―女性がいう支配関係は、本来の支配関係とは違うんですね。
野ばら:陵辱されるのを妄想して楽しむのは、まさに支配・被支配の関係を反転させる現象です。ルールの盲点をついて、逆にルールを取り決めた相手を窮地に追い込む頭脳プレイ。一方的な「支配」を拒絶するのでなく利用する発想ですね。
僕が考える「支配」妄想は全然違って。
僕が一番興奮するシチュエーションって、僕に何の興味もない、むしろ嫌悪感を抱いている女性のカバンの中に、彼女が知らない間に射精して知らんぷりをする…ってもの。
―一方的で、本来の「支配」に近いですね。なんだか男性的です。
野ばら:僕は、ゲイと間違われますが、性的にはストレートなんですよ(笑)。
支配したいから、支配されたい
野ばら:性ファンタジーは男性的だけど、女性の思考もよくわかります。
もうこの年齢だから言ってもいいと思いますが、若い頃はすごくかわいかったんです。幼少期はおかっぱ頭だったし、男の子として見られることはまずなくて。中学高校に進んでも、私服が女性的だったこともあり、やっぱり女性に間違われていました。
その当時は、ナンパブームで、ナンパして、ディスコとかに連れて行って、その後あわよくば…というのが若者のトレンド。そういう時代に街中に出ていくと、ナンパしようとしている男性の目にさらされるんですよ。
―野ばらさん自身が?
野ばら:そう。歩いていると、たくさんの男性たちが「あの子はヤレるかな?ヤレないかな?」と値踏みしていく。女性が男性を値踏みするときって、容姿だけじゃなくスペックや性格なども加味しますよね。対して、男性は「胸でかい!」「足細い!」などセックスに直結する視線を向けてくる。獣がターゲットを狙うような男性の視線に対する恐怖感や嫌悪感は、女性と同じように感じてきました。
で、そういう視線にさらされている女性がどうするかというと、結局は居直るんです。
―居直る?
野ばら:性の対象として見てくれてもいい、その視線を逆手にとって生きていってやろう、という居直りです。
今は少し廃れてきましたが、すべての女子たちがアイドルになってやろうとするアイドルブームって、自分が性的対象として見られる状況を逆手にとって、おもしろおかしく楽しんでいこうっていう姿勢だと思うんです。
つまりは、支配されているふりをして、男たちを支配する。
僕はそういう女性の生き方を、すごくかっこいいと思いますね。
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