女性向けアダルト動画サイト
「GIRL’S CH」の立ち上げ
田口:ちょうどそのころ2013年の1月に「GIRL’S CH」というサイトを立ち上げました。
当時はガラケーの人も多かった時代でしたが、この2年でほとんどスマホになり、その後押しもあって現在は月間130万人利用者がいるサイトになりました。今は毎日10本ずつ動画をアップしています。
祖父江:見たんですがすごかったです。当初、女性向けAV動画は正直少しヌルいな、という印象があったのですが、ふとこのあいだ「GIRL’S CH」を見たらすごい過激になっていて、この数年で何があったの!と。
湯山:実は女性向けマーケットはすでに成熟していたんだけど、社長は男性だと、どうしても無意識に「これは違うだろ」と心理的操作が働いてような気がする。時期早々だろう、と。
でもそれがそうでもないっていうことが実際にわかって、GOが出たんでしょう。元々の男性向けもフェチでいうと、すごいバリエーションありますよね。
女性も愛あるセックス、なんて言うのではなく、けっこう即物的な、あれぐらいまで行くんじゃないかという予測が立ったんじゃないですか?
田口:これは私の仮説なんですが、まだまだ男性ユーザーがほとんどであるAV業界全体で見たとき、SILK LABOというのはある種のフェチメーカーといえると思うんです。
男性向けのAVになかった、ソフトさ、イケメンAV男優、しっかりとしたストーリー、というのはAV全体のマーケットで見たらすごくフェチのジャンルだと分類することができると思うんですが、そこについてきたのがたまたま女性だったのかなと。
それからどんどんSILK LABOを観る人が増えてきて、SILK LABOが女性向けAVの代名詞的な存在に成長して、見る側に女性向けとはこうだという型ができちゃったんじゃないかと思うんです。
誰も押し付けてはいないんですが、観ている人の中で「女性向けのAVはこうあるべき」とユーザーの中で勝手にイメージが膨らんで、ソフトであるべきとか、男優はイケメンじゃなきゃダメとか。
でもそれが全部の女性の意見かというとそうでもない。
そこで、そうじゃない女性の捌け口を探そうというときに、女性自身どういうAVを観たら満足できるのかが自分ではわからなかったという現状があったので、それを探る場所を作るという目的で「GIRL’S CH」ができて、ハードなものや笑えるものにも取り組んで毎日動画をアップしていったという感じですね。
女性の物語がわからない男性と ダイバーシティな女性の視点
湯山:女の人はポルノを観るときに女に感情移入するとは限らないんですよね。
ガンガンに攻めている男の視点で観たり、GoogleEarthみたいに鳥の目で観たり、受ける側にスイッチしたり、読み手の感情移入が女の人は多様性がある。
すなわち、ダイバーシティなんです。
実は今『男をこじらせる前に』という書籍を書き下ろしているんですが、取材で男性に話を聞いた時にビックリしたことがあって。
男性が主人公のマンガありますよね、例えば『花の慶次』を読んでいるとき、私は慶次に入り込んで興奮します。『進撃の巨人』でも男性主人公に感情移入する。『スラムダンク』だったら女子マネージャーに感情移入はせず、三井に感情移入する。
ただ男性の場合、女主人公には感情移入しないんだそうです。女の人は男の物語に関して自分も男になりきる読み方をするんですが、その逆は無いんです。
例えば『アナと雪の女王』のエルザに共感した男性います? いないんですよ。そこがデカイんです。
女流文学というのは「女の主人公なので男の人は感情移入できません文学」なんです。
これは今のダイバーシティ、バイリンガル性において、男の人はハンデですよね。女の物語がわからない。
田口:無料なのにうちのサイトに男性が来ないのはそういうことなんですね。
シチュエーション萌えから直接的な萌えへ
湯山:7、8年前に、デザイナーの男子から、「湯山さんこれ資料で買ったけどいらないからあげる」とBLを大量にもらったんです。
執事と伯爵…みたいなのは知っていたんですけど、とんでもなくて!ショタコンというのか、少年と男の人の組み合わせで局部丸出しなの。
だから、その7、8年前の時点で、女の子は「関係性に萌える」というよりもっと直接的なところに行っていると思ったんです。
映像もそうなってきているんですかね。
田口:そうですね。
湯山:そもそも、男性と女性で萌えるところは違うと言われていましたが、それって今はどうですか?
「男性は視覚的でおっぱい出せばOK」、「女性は前戯や、セックス中での言葉や空気といったことに欲情して、男性ほど記号的に強くない」という話でしたが、私はそれもそろそろ外れる気がするんです。
田口:まさしくその通りですね。サイトの視聴傾向を見ていると、ここ2、3ヶ月の人気ワードは「絶頂」か「エッチ」がタイトルに含まれているものなんです。
それまでは「イケメンの先輩に口説かれて」みたいなシチュエーション萌えが上位にあったんですが、最近は女の子が感じている様子が入っているものがいいとか、行為そのものが入っているものがいいというのがあるようです。
湯山:行為の中の本当のところに欲情するんですね。なるほど。
1つ思い出したのが、田辺聖子原作の『ジョゼと虎と魚たち』という映画ですね。池脇千鶴さんと妻夫木聡くんの名ベッドシーンがあるんですが、その時妻夫木くんの身体がバーっと赤くなるんです。
「コイツ本気だ」と、思って、彼の大ファンになっちゃったんですけれど(笑)。
そういう風に、本当に欲情している様子にシンクロしてマスターベーションするということですね。
【次回に続きます】