車掌がいなくなったら…
さらに、特急や新幹線を利用する時にエロをするという男もいた。もう名前はどうでもいい。Aでいい。4歳年下の男なのだが、当時、彼女と旅行をすると帰りは東京方面へ行く最終の特急や新幹線に乗っていたのだという。彼は最終電車ないしはそれに近い電車に乗り、自由席かつその電車の端っこである1号車の先頭の3人席に2人で座る。彼はガラガラの時間帯と区間を把握していたのだという。
その勘は案外当たり、1車輛にAと彼女しかいないということもある。車掌による検札があったうえで、そこから先の数駅で誰も乗ってこないという確信を持てる区間がある。
「ほとんどの人は指定席取るんですよ! 安心を求めてね。でも、僕らみたいに旅慣れた人間は、自由席でいいんです。自由席があるホームの端っこまで歩きたくないというのもあるでしょう。だから、車掌がいなくなったらそこからはハッスルタイムです!」
鉄道会社としては電車をラブホテル扱いするのはたまったものではないし、そもそも公然わいせつ罪になりかねない。若い2人にはそこまで配慮が及ばなかったのだろう。「バレなければいいさ」の精神でこの2人は電車でヤり続けたのだとか。しかし、さすがにAが結婚した女性はこの人ではない。別の慎重派の女性だった。
もしも大胆不敵な彼女と結婚でもしていようものなら、「ヤれる航空会社と路線」なんてうさんくさい情報商材を売っているカップルになっていたかもしれない。そして、航空会社から訴えられていたかもしれない。
Text/中川淳一郎
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