ハプバーで知人に会ったらどうする? 

頻繁に連絡を取るような仲ではないので知らなかったけれども、いつの間にかハプバーの店員となっていたとは。それはいいとして、向こうはポーカーフェイスだけど、まさか、気づいてない?……わけはない。絶対に気づいているに違いない。こういう場所だから、例え知っている人が来てもスルーするのが正しいふるまいだと思うし、こちらはこちらで、取材許可を取らずに勝手に中でのアレコレをレポート記事に仕立てようと目論んでいるわけで、あえて名乗る必要もない。けれども、「りかちゃん、場を荒らしてたな~」なんて思われるのも、ちょっと嫌だというのもあって、葛藤したあげく「会ったこと……あるよね?」とおずおずと話しかけたところ、「おー、りかちゃん。珍しいね。あっ! 潜入取材とか?」と思惑にまで気が付かれたのでした。悪いことはできない……。 

後に二回、そこで開かれるイベント目当てに足を運ぶことがあったのですが、知人の懐の中だと思うとなんだかヤル気になれない。客同士で偶然かち合ったならともかく、服を着て働いている知人の前でセックスはできないというのが、どうやらわたしの限界点のようです……あっ、ようやく指の血が止まった。

Text/大泉りか