メリットがなくて気の毒な夫
今回「妻が物書きで夫にメリットはあるか?」を考えてみたが、結論から言うと、何もない。
少しぐらいあるのではと沈思黙考してみたが、本当に何もない。
むしろこういったコラムでネタにされるなど、デメリットしかない気がするが、夫に文句を言われたことはない。
締切前、私が風呂に入らずどんどん臭くなっても、特に文句も言わない夫。
今はそこまで忙しくないが、乙女ゲーのシナリオを書いていた頃は、1ヶ月ほどカンヅメになることもあった。
ある時、空手バカ一代を参考に「眉毛を剃らない」というチャレンジをした。ついでに鼻の下の産毛も剃らずにいたら「こんなに毛って生えるんだ…!」と感動するほど、顔がフサフサになった。
そんな獣じみた妻を見ても「精悍な顔つきになってきたね」と褒めていたので、我が夫はいい奴だと思う。
そんないい奴なのに、メリットがないのは気の毒である。
たとえば雑誌に取材を受けたりすると、掲載誌が送られてくるが、そのほとんどは彼の興味のない女性誌だ。
夫は釣りが趣味なのだが、私の元に『月刊へら専科』や『ちぬ倶楽部』から取材が来ることはないし、もし来てもへらやちぬについて語れることは何もない。
あまりに夫が浮かばれないので、無理クソひねり出したメリットは「いろんなシャンプーやボディソープを使える」。
私は以前、某コスメサイトで連載を持っていて、毎月さまざまなサンプルが届いた。
その多くは「男を魅惑する甘い香り」や「彼を夢中にさせるフェロモン配合」とうたう、キラキラ系のボトルに入った商品だった。
「プリンセスラブボディ」や「ベリーベリーフェロモン」といったボディソープで、ムキムキの体を洗っていた夫。
当時はよく体から甘い香りをさせていたが、本人も「フェロモンを分泌するのは昆虫だけだぞ」と言っていたように、寝技中に相手を魅惑して試合に勝ったという話は聞かなかった。
それらもたまたま風呂場にあったから使っただけで、夫はボディケアだのスキンケアだのには興味のない人間だ。
興味がないどころか、夫は生まれてから一度も顔を洗ったことがないらしい。
シャンプーの泡で洗浄されるからいい、という理屈らしいが、義母いわく「ちゃんと顔を洗いなさい!」「顔なんて女の洗うものだ!」というバトルを十代の頃から繰り返してきたそうだ。
うちの弟が泊まりに来た時も、マイスキンケアグッズを持参しているのを見て「弟くんはアムウェイか?」と小声で聞いてきた。