ライオンハートとカブトムシ

 世間ではゴリマッチョよりも細マッチョが人気だ。

「細とマッチョって矛盾してないか?」と言う私に「わかる、私も細マッチョは洗濯板にしか見えない」と同意してくれる友がいる。

その友人は帰国子女で通訳の仕事をしている。今まで付き合った彼氏もムキムキのギリシャ人とかで、華奢な男はレーダーに映らないそうだ。

彼女は仕事でよく有名人に会うのだが「ハンマー投げの室伏選手に会ったんだけど、超カッコよかった~!!!」と瞳孔が開いていた。

一方「この前、仕事で嵐のメンバーの1人に会ったよ」と言うので「嵐のメンバーの誰?」と聞いたところ

友人「うーん、私は個体識別できないんだけど…眉毛が郷ひろみに似てた」

アル「それマツジュンやわ」

現代日本でどうすればマツジュンを知らずにいられるのか?と疑問だが、彼女はテレビや芸能にうとく、朝ドラの『あまちゃん』も尼さんの話だと思っていたらしい。

マツジュンを知らないのも驚きだが、夫に「ミスチルの曲を一曲も知らない」と言われた時も驚いた。自分の好きなゲームやアニメの音楽しか聞かない彼は、SMAPの曲もろくに知らず、『ライオンハート』を初めて聞いた時「何だこの歌詞は!」と怒っていた。

夫「君を守るために生まれてきた?ライオンのオスはメスに狩りをさせるし、多数のメスと交尾してハーレムを形成するんだぞ。動物の生態を無視している、この歌詞を書いたのはキムタクか!」

アル「キムタクは歌うだけで書かないと思う」

かくいう私もaikoの曲を一曲も知らなかった。

もちろん耳にしたことはあるが、カラオケでaikoを歌う友もいないため、ちゃんと聞いたことがなかったのだ。だから今の今まで、『カブトムシ』は彼氏と昆虫採集に行く歌だと思っていた。だが歌詞を検索してみると「彼氏の耳周辺から甘い匂いがする」という歌だった。

その彼氏は耳から何を分泌しているのか。

耳からする匂いと言えば、加齢臭だろう。通訳の彼女は「加齢臭は世界共通だ」と話していた。

各国の政治家が集まる国際会議などでウィスパリング(耳元で囁く通訳)をしていると、加齢臭で意識が朦朧としてきて、日本語を日本語で伝えてしまうらしい。それではただの伝言ゲームだ。

見た目の好みに話を戻そう。

ゲイの男友達が「“二丁目に捨てるゴミなし”は本当よ。ゲイの世界はエコなの」と話していた。ゲイの好みは多様で、どんな見た目にもニーズがあるという。「棺桶に片足突っ込んでるジジイが好きな桶専もいるしね」とのことだが、やはり王道モテ系も存在するらしい。

TOFUFUで連載中の山田ルイ53世さんは「ゲイが好きな芸能人1位」に選ばれ、ゲイ界では「淫乱テディベア」と呼ばれているそうだ(ご本人もテレビでそう仰っていた)。ゲイ友も「あれはズルいわね、完璧すぎるわよ」と言っていたので、ノンケ界における石原さとみ的存在なのかもしれない。

ちなみに現在、私の携帯の待ち受けは『ゴールデンカムイ』の谷垣ニシパの入浴シーンなのだが、それを見たゲイ友に「あんた、好みがゲイね」と言われた。