悩むのは「良い子」

「退職後はカッパを探しに行きたいです」/59番目のマリアージュ 天堂きりん『きみが心に棲みついた』

 いろいろ聞いてみると、子どもの頃の私と夫は共通点が多い。

「親は『あんたのため』と言うが、そんなのはウソだと子どもはわかっている」という夫の言葉を聞いて「イエス!!!!!」とハイタッチした。

 私も「あなたのため」と親に言われるたび「自分のためだろう」と思っていた。習い事も塾も中学受験も「私がやりたいこと」じゃなく「親がやらせたいこと」だった。「あなたの幸せを思って」と言いながら、親は「親の考える幸せ」を押しつけてくる。

 そんなふうに思ったのは、私も夫も「良い子」じゃなかったからだろう。

「あなたのため」がウソだと心の底でわかっていても、良い子は「そんなふうに思っちゃダメだ」「親を疑う自分は悪い子だ」と感情に蓋をする。そうやって蓋をし続けるうちに、どんどん自分が苦しくなる。

 大人になって生きづらさに悩むのは、大体が「良い子」だ。「こうあるべき」という他人の期待に応えようとするうちに、自分のやりたいことがわからなくなってしまう。逆に「他人は関係ない、自分は自分」というタイプはのびのびと生きている。

 夫は母親に「勉強して良い大学に入って良い会社に入れば幸せになれる」と言われるたび「それは誰が決めてん?」と返して「あんたは子どもやから分からへんだけや!」とケンカになっていたらしい。

 親は「子どもは未熟で世間を知らない」という理屈で「親にとって都合のいい常識」を押しつけてくる。しかも自分は正しいと信じているから話にならない。ほんと親って面倒くせえよな!と親の悪口で盛り上がれる相手と結婚してよかった。

 前回登場したカマロくんは「うちの母親は偉いと思う」と言っていたが、うちの夫は「あのババアは頭がおかしい」と言っている。ひどい息子のようだが、義母も大概ひどいのだ。

 義母は小学生の息子に整形手術を受けさせようとしたらしい。「ブサイクやったらあんたが困るやないの!」と言われて「ふざけるな!!」と断固拒否したそうだが、もし親の言うことを聞いていたら『きみが心に棲みついた』のサイコパス野郎になっていたかもしれない。

 ちなみに義母本人は二重に整形していて、最近もまぶたのたるみをとる手術を受けた。そう、やりたければ自分がやればいいのだ。