好きな人ってどうやって作ったらいいですか?紫原明子✕二村ヒトシ/AM紅白

AMのスタートからもうすぐ8年。その間、恋愛にまつわる話題を多数取り扱ってきました。なかでもお悩み相談は人気コンテンツで、日々たくさんのお悩みが編集部に届いています。 年末年始にあわせ、『AM紅白』と題し、そんなお悩みを、女性・男性ひとりずつの識者からご回答いただきます!
2つの回答をぜひお楽しみください。

好きな人ってどうやって作ったらいいですか?

好きな人ってどうやって作ったらいいですか?

20代後半ですが、最近好きな人が中々できません。会社で会う人もいつものメンバーですし、マッチングアプリでも何とも言えない人ばかりです。恋愛のあの燃え上がるような楽しさと切なさを感じるようなすっごく大好きな人を何とか作りたいです。昔はすぐできていたのに、最近はできません。どうしたらそんな好きな人ができるでしょうか。

紫原明子さんの回答

紫原明子さんの回答

好きな人ができないときというのは往々にして、すっかり自分で自分の調和が取れてしまっているときです。自分の調和が自分で取れてしまうと他人の介入を必要としなくなってしまいます。
それ自体決して悪いわけではないけれど、退屈だと感じるようならやはり、そんな調和を乱さねばなりません。

そのために一番大事なことは、日常における非日常の割合を増やすことです。日常は私達の感性や思考を縛り、制限し、一つの狭い場所に閉じ込めようとします。日常は私達に出ていかれると寂しいので、非日常への入り口を巧妙に隠そうとします。
私達が退屈と戦うためには、定期的にそんな日常と戦い、非日常の入り口を見つけ出し、未完成で、未だ調和の取れていない、新しい自分に出会わなければなりません。

さて今日は皆さんに特別に、私達の一番近くにある、非日常の入り口をお教えします。それはずばり「SEX AND THE CITY」を一気観する、これです。私の知る限り、これ以上手軽かつ効果的な方法を、人類は未だ発見できていません。

とっくにご存知かと思いますが「SEX AND THE CITY」は20年前にスタートしたアメリカのドラマです。文字通り、街中のいたるところでセックスが発生します。4人の女性の周りに、同時多発的かつ継続的に、恋愛とセックスが発生し続けます。一話だけみれば「すごい世界もあるもんだな」で終わるところが、1〜2シーズンほど一気観することによって、脳がその世界を自分の日常であるかのように錯覚し始めるのです。そうしたらしめたもの。すかさず現実の街へ繰り出しましょう。見慣れた景色を前にしたあなたはきっと、驚きとともにこう思うはずです。
「ま……街のあちこちに恋とセックスが転がっている!!!」

そこで試しにコンビニに入ってお弁当を買ってみましょう。
「お弁当、温めますか?」
コンビニの店員さんに聞かれたら、あなたは最早こう答えずにはいられません。
「……難しい質問ね。あなたはどう思う?」
伏し目がちなあなたに店員さんは一瞬動揺を見せ、しかし可笑しそうに目を細めながら
「もうすぐ仕事が終わるから、僕の家で一緒に温めるっていうのはどう?」
……と、十中八九言わないでしょうがそれでもいいんです。あなた自身はこの時点で非日常を十分摂取しています。体の中に非日常を取り入れた分だけ、新しいあなたに生まれ変わっています。これでもう、すでに人を好きになる準備万端です。

紫原明子
エッセイスト
1982年、福岡県生まれ。男女2人の子を持つシングルマザー。 個人ブログ「手の中で膨らむ」が話題となり執筆活動を本格化。BLOGOS、クロワッサン オンライン、AMなどにて寄稿、連載。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)がある。
Twitter:@akitect