最低な朝を迎えた日は、昨晩の自分にうんざりする。例えば、待ち合わせ時刻に目が覚めた朝、張り切って歯医者へ行ったら定休日だった朝、大して好きでもない男の部屋でベッドの下から昨晩の抜け殻を探す朝。特に最後のは、午前0時頃の自分を思いっきりビンタしてやりたくなるほどうんざりする。
けれど、翌朝になって後悔することは、昨晩の時点から分かっていた。そうなることは、家を出て歓楽街へと向かう道のりから予感していた。男の部屋から、大きな虚無感を手土産にして家路へ着くハメになることも知っていた。
そこまで理解しているのに、なぜ私は数々の最低な朝を迎えてきたのか。その答えは、なんとまさかの“大切にしたい人がいたから”だと思う。
「いやいや、大切にしたい人がいたらそんなことしないでしょ!」という意見が大半なのは分かっているし、実際、そうあるべきだとも思っている。だから、これが“ヤリマンの言い訳”にしか聞こえなくても文句はないが、愚かな女の言い分を聞いてほしい。
毎晩いろんな男とヤる、マリちゃん
軽く見える女ほど人一倍重たいのか、人一倍重たいから軽く見せているのか。どちらの言い方が適切なのかは分からないが、私はそういう女を自分以外に一人だけ知っている。親友でキャバ嬢のマリちゃん。
自らのことを「アタシはヤリマンだから」と言い切り、その言葉通り、本当に端から端までいろんな男とヤる女。(私は一人称が“アタシ”の人間を強烈なオネエとマリちゃん以外に見たことがない) まともな女が寄り付かないような男をいつもどこからともなく拾ってくるもんだから、女友達の間では“ゴミ収集車”と呼ばれている。
そんなマリちゃんには、数年前から変わらずずっと好きな男がいて、今でも毎晩いろんな男と寝ながらその男のことだけを想いつづけている。
私はマリちゃんほどアグレッシブに一晩限りの戯れを楽しめるタイプではなかったし、好きになる男のタイプも全く違っていたが、その天邪鬼とも取れる行動はよく似ていた。
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