Toes By Mikamatto
「憎むほど愛しい、憎んだ瞬間ほどその女が美しく見える瞬間はない」。
これは近代日本文学を代表する小説家の一人、谷崎潤一郎の代表作『痴人の愛』の一節です。
主人公の河合譲治はカフェで出会った美少女、ナオミを見初めて、彼女を引き取り洋館での2人暮らしを始めます。最初は寝室も別で、友達のような関係を送るのですが、次第にその美しさに魂を奪われ、夫婦として生活をすることになりました。
しかし、ナオミは大人になるにつれ、本性をむき出しにし、言いよってくる男性すべてと同衾を繰り返すようになりました。その行動に怒りを覚えた譲治はナオミを一度追い出すのですが、すぐに後悔の念にさいなまれ、夫婦生活を再会。
ナオミがなにをしても許し、ナオミの奴隷として生きていくことを決めるのです。
悪魔主義者と言われた著者が生みだした最強の悪魔のヒロイン、ナオミ。当時、ナオミズムという流行語を生み出し社会現象を巻き起こしたほどでした。
サディスティックな美少女・ナオミと、その美しさに溺れ破滅していく譲治。大正末期の性的に解放された社会を背景に描かれた傑作。男性の恋心の奥に潜むエゴと女性の怖さを疑似体験してみては?
書名:『痴人の愛』
著者: 谷崎潤一郎
発行:新潮社
価格:¥660(税込)
Text/Yuuko Ujiie