愛が深すぎるがゆえにお互いを不幸に──瀬戸内寂聴の私小説『夏の終り』

夏の終り 瀬戸内寂聴 新潮社 Tears By MmMmMmMatt

 小説家で天台宗の尼僧であり、恋多き人生を重ねてきた瀬戸内寂聴さんが出家前の経験を書き綴った私小説『夏の終り』。1966年に発売され、女流文学賞受賞作を受賞。今までに100万部の売り上げを越えるロングセラー小説。来年2013年に、女優・満島ひかり主演、相手役に小林薫、綾野剛というキャスティングで映画化が決定しています。
男女の恋愛に対する苦悩や喜びというような気持ちは、50年前経っても変わらず問い続けていく課題のようなもの。映画公開にも期待が高まります。

 妻子ある作家との8年に及ぶ恋愛生活に疲れ果て、年下の男性からの激しい愛欲に溺れるも満たされることのない主人公の知子。愛情が深すぎるがゆえに、お互いを不幸にしてしまう…。自分自身の“女の業”に苦悩しながらも、独自の愛を見つけていきます。

 女の意地、幼さや脆さが残酷なまでに描かれている本作、恋に悩んでいる人にはもしかしたら読み進めるのが辛いかもしれません。しかし、きっと読み終えたころには何かヒントをつかめるのではないでしょうか。恋に揺れる女性必読の1冊です。

夏の終り 瀬戸内寂聴 新潮社

書名:『夏の終り』
著者: 瀬戸内寂聴
発行:新潮社
価格:¥452(税込)

Text/Yuuko Ujiie