気がついたらベッドの上でした
モンゴリアンチョップさん(埼玉県)
エピソード:
大学を卒業して半年後、在学中に親しくしていた講師の個展を見に行きました。
講師は自分の親と同い年の妻子持ちの芸術家でした。美術に興味のある私は毎授業後に話を聞きに行き、時々お茶も飲みに行くような関係でした。
久しぶりの再会で話がはずみ、閉廊後に二人で飲みに。しかし、なぜかしたたかに酔ってしまい記憶が飛び、気がついたらホテルのベッドの上。
事が全て済んでいたらまだよかった。
酔いが覚めて冷静になりつつある私と、ロックオンモードの講師。抵抗したら何をされるかわからない…と観念しました。
でも、普段は渋めでウィットに富んだ講師が、妙にねっとりした猫なで声で甘えてきて、どうにも乗り切れない。ゴムはつけないし、「入れたよ」と自己申告されるまで人差し指だと思ったほど細い。
気になることが多すぎて、この時ほど楽しめないセックスは後にも先にもありません。
しかも、前日にも翌日にもSNSで家族への愛を綴っていて、既婚男性なんてこんなものかと、結婚や男性への不信が高まりました。
それ以来その講師とは音信不通です。
いま私あなたの妻とキスをした酔ったあなたの唇介して(モンゴリアンチョップ)
「あこがれています」と「あなたと寝たい」の雰囲気の違いがわからない男は多いです。
二人だけで飲みに行った時点で襲われるのは覚悟しろ、みたいなことを公言してはばからない男さえいまだにいます。
そういう若い男子に僕がよくするのは「白鵬の夜」というたとえ話。
横綱・白鵬関と話すチャンスがもらえたら、僕は当然はしゃぎます。その場で意気投合して二人で酒を飲もうとなればそりゃあもう大興奮でしょう。おごってくれたらなお幸せな気分。
でも、その夜、態度を急変させた横綱が僕をホテルに連れ込んだらどうでしょう。強引に肉体関係を迫られたとしたら。それはまた、別の相談です。少なくとも尊敬の念は消え、二度と会いたくない「敵」あるいは「恐怖の対象」になるでしょう。
なんのことかとお思いでしょうが、こういう説明をしないとわからない男も結構いるんです。「あこがれの男性」というモテ度のかなり高い立場を自分から捨てていることに気づかない。もっと誠実に付き合ったらもっといいセックスができるのにね。もったいない。
とはいえやっぱり「あこがれ」と「寝たい」は外側からはとてもよく似て見えます。シャンプーとコンディショナーのボトルぐらいそっくりです。
常識的な大人にだって見分けがついてるわけじゃなくて、ただ「間違うならば安全なほうに間違おう」というフェイルセーフの思想にもとづいて、若い子からのアピールをかわしているだけのことが多い気がします。
まあ、なんか色々間違っちゃって一線を超えるようなことがあっても、せめて、自分の性欲をむき出しにして失望させるのだけはやめてほしいですよね。夢の国はとことん夢の国であり続けるのが、僕たちおっさんに課せられた最低限の使命なんじゃないかと思います。
いただいた短歌、鋭い視点です。「不倫は奥さんとの間接キスだ」という発見ですね。最後の8音がちょっとばたばたしてる感じでもったいない。
いま私あなたの妻とキスをした 酔ったあなたの唇ごしに
ぐらいのほうが字面もすっきりするのかな。「酔ったあなたの」も「あなた」が重なってるぶん、替えられるかも。「お酒の匂う」とか。まあここはいじりかた次第で悪くもなってしまうので、難しいところですね。