なぜ35歳でエロを恥ずかしがるのか?彼女の本心が今も分からない/中川淳一郎

初エロの時、とにかく恥ずかしがる人がいた。僕が学生時代一方的にホレていた事務員の女性・麻里さんだったのだが、1年半以上食事に誘い続けた結果ようやくランチを一緒に食べるに至った。それからしばらく会うことはなかったのだが、社会人になって約1年後、たまたま街でバッタリと会った。

彼女は35歳ぐらいだった。元々イベントコンパニオンをやっていたようで、派手な業界も経験した末に、公的な機関で事務員になったのだという。彼女は多分20代の頃はかなりモテたのだと思う。その自信があるからこそ、僕に対してつれない態度を取っていたが、もしかしてその頃付き合っていた男と別れたのか、この時「ニノミヤ君、近々飲もうよ」と誘ってきた。

学生時代と全く異なるフレンドリーな態度には驚いたものの、ホレた相手からこう誘われることは嬉しいことである。僕は「喜んで!」と居酒屋「庄や」の店員のごとき返事をして彼女との約束を取り付けた。

かくして彼女とはサシで飲んだのだが、「次はいつ会える?」と誘ってきた。次の週の土曜日に会う約束をし、その日も飲みに行ったが、いきなり核心を突いてきた。

「ニノミヤ君、私たち付き合わない?」
「えっ! いいんですか? オレ、麻里さんから嫌われていると思っていました」
「嫌いだったら誘わないでしょ。当たり前の話」
「いいんですかー! やったー!」

というわけで、僕らは付き合うことになった。となれば、付き合う初日にやることといえば、エロである。新宿・歌舞伎町のラブホテルに誘ったのだが「えっえっ、いきなり? やっぱ今日はダメ、えぇと、また今度にしよう!」と言われた。

いつになればエロができるんだ!

こうして、この日はキスすらせず別れたが、「果たしてオレ達は本当に付き合っているのだろうか……」というモヤモヤした気持ちになった。そして次に会った時も「えっえっ、今日もまだ早いよ!」とラブホテルの誘いは断られた。というわけで、エロをしないカップルという形態も広いこの世界にはあるのだと割り切り、麻里さんがやる気になるまではエロはこちらからは誘わないことを決めたのである。

次のデートでも断られた。20代前半の男としては、エロエロモード全開で会っているだけに、麻里さんのこの対応には不満はあったものの、ホレた者は弱い。彼女の気分が変わるのを待つことにし、オナニーを頑張ることにした。

一体いつになればエロができるんだー! という逢瀬を重ねていたのだが、ある日麻里さんは「今日はいいよ」とついに言い、歌舞伎町のラブホテルへ。しかし、服を脱ぐのを躊躇し、「うわうわ、恥ずかしい」と言い続け、服を脱いでくれない。缶ビールを二人飲みながら過ごしたのだが、結局この日もエロはなく、正直この段階で悪い言葉だが麻里さんは「カマトト」なのではないかと思うようになり、恋心も冷めていった。