その方向に持ち込んではいけない

そこから毎週1回は彼女の家に呼ばれるようになったのだが、毎度それで終わりである。そうこうしている内に彼女は自宅に火を放ち、足に大やけどを負い、再び病院へ。さらに精神病院へ転移となった。さすがにこれには僕も何をしていいのやら分からなかった。

自分の感覚では、多分佳純さんとはあの部屋でエロはできただろう。しかし、どこか精神の危うさを感じ、そのようなことをしてはいけない、という自制心が働いたのだと思う。結局それ以降彼女と会うことはなく、僕の元にはゲームボーイカラーとテトリスが残り、それを時々しながら彼女のことを思い出すのであった。

それまでエロは「なんとなくその場の勢いで」という経験ばかりしていたのだが、「ここはその方向に持ち込んではいけない気がする」というのは佳純さんとの対峙で初めて経験した。正直正解は分からないが、あの時彼女と何もしないで良かった、と今となっては思うのである。

Text/中川淳一郎