砂漠が女たちを結託させる
おまけのもう一本は 『プリシラ』。こちらもある意味ではタイトルロールを持つ作品です。
ただし、この映画の主役はミッチ、フェリシア、ベルナデットの三人。
砂漠の真ん中でショーをやることになったドラァグクイーンの彼女たちが旅の道連れに入手したオンボロのスクールバス。それが「プリシラ」です。
年若いボーイフレンドを亡くしたベルナデットとクレイジーなほどハイテンションで利かん気のフェリシアというまっっったくウマの合わない二人に声をかけたミッチには、どうしても今回の興行を成功させたい理由がありました。
仲間ではあっても馴れ合ってばかりきたわけじゃない。それぞれに過去や秘密、葛藤を抱えた三人は時には悪態をつき合いながら、時には保守的な田舎社会から身を守り合って砂漠を渡っていく。
奇抜な衣装と砂漠のミスマッチが生む妙に荘厳なシーンの数々が美しく目を楽しませてくれます。
往年のディスコナンバーが次々に飛び出すショーのシーンも何度見ても不思議と飽きない。
遅い時間にだらだらお酒とおつまみに手を伸ばしながら流しっぱなしにしててもいいようなチルな映画でおすすめです。
心に残るのはごろつきに痛めつけられたフェリシアにベルナデットがかけるこんな言葉。
「可笑しいわよね。私たち、いつもゴミ溜めみたいな都会に文句言ってるけど…結局は守られてる。
街のきったない壁がああいう連中が入ってくるのを…もしくは私たちが出るのを防いでるのよ。
さあ、落ちこまないで。強くなるの。
私だって最初から戦えたわけじゃないんだから。」
人生楽しんだもの勝ちっていうのはきっと能天気な言葉じゃなくて、前を向いたもの勝ち、やってみたもの勝ち、さっさと泣きやんで憎むより愛したもの勝ち……そういう風にできているのでしょうか。
壊れたエンジンでも行けるとこまで行くような生き方が、私にもできたらいいな。
TEXT/気絶ちゃん
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