伝説の「沢マン」の初印象は
ウォン・カーウァイの映画風!?
結局いくら考えても、正解なんてあるはずもなく、やってみないと何も分からない。実行に移してハッピーじゃなければ、その地点を新たな足がかりにして変えていくしかないのだ、何事も。そこまで考えた私は、えい、とばかりにメールをしました。かなちゃんに、「8月から1か月、滞在させて!」と。その後つらつらと「到着日はいつで、荷物はこうで…」と細かいメールを送った私に対するかなちゃんの返信は、ただ一通、「すべて、OK!」。あー、私が求めているのはこのシンプルさなんだ! 見習います、着いていきますッ!
そこから怒涛の勢いでムリヤリ部屋を空にして、契約最終日の夜、ギリギリで退去。翌々日には東京を立ち、再び高知の地を踏んでいました。この時、2014年8月の高知は記録的な大雨。海とか川とか青い空とか、高知的ライフはお預け。ただただかなちゃんの家で部屋にこもって、仕事をして猫と遊んで、そして家探しを始めました。
かなちゃんの素敵ハウスに心を掴まれている私は、一軒家に的を絞って探しましたが、これがなかなか厳しい道のりで。県庁の移住促進課に相談に行き、不動産屋さんを紹介してもらうも「県外から来たばかり」、「高知には身内もいない」、「独り者」、「仕事はフリーランス」とくれば、大家さんはなかなか貸したがらないよ、と根本的な部分で希望を打ち砕かれるのでした。いくら行政が移住ウェルカムと言っても、不動産オーナーからすれば私は完全に「どこの馬の骨とも知れぬモノ」。当然のことですな(その辺りの行政/大家さんなど一般の人との意識の乖離はこれからどうなっていくのか、移住者としては目が離せないトピックです)。
そうして約束していたホームステイ期間の1か月が経とうとして焦り始めた頃(何か毎回がギリギリなのは、生まれた時の星の並びか何かのせいだと思いたい)、友だちが教えてくれたのが「沢田マンション」でした。「きっと、好きだと思うよ」と。
「ネットで見たことがある気がする…」、それが沢田マンションの名を聞いた時の印象でした。大家さん夫妻が手づくりで築き上げた、伝説の巨大軍艦マンション。個性的な部屋たちは2つと同じ間取りはなく、屋上に庭や畑、池がある。あのマンションがある高知だったんだ…!
早速友だちが車を出してくれて現地へ。大家さんに連絡し、部屋を探している旨を伝えると、大家さん夫妻のお嬢さんが快く部屋を見せてくれました。
迷路のような廊下を進み、不規則に現れる階段を上るうち、自分が何階のどこにいるのか分からなくなる。残暑の温度や湿度と相まって、まるで東南アジアの異国にトリップしたよう。ウォン・カーウァイの映画でこんなマンションが出てこなかったっけ…? すごくすごく、どきどきしたのを覚えています。