「子供の存在」を後悔しているわけではない

本書は母親になったさまざまな女性たちが「今の知識と経験を踏まえて過去に戻ることができるとしたら、私はこの道を選ばない(母親にはならない)」と答えている。ただし、著者はそこで、この回答に付きものである誤解を丁寧に解いていく。インタビューに答えている女性たちは、母親になったことを後悔しているが、自分の子供を愛している。「後悔は母親になったことであり、子供がこの世に存在することではない(p.118)」とは、本書で何度も強調される主張だ。確かに、「母親になったこと」と「子供の存在」が混合されがちなのはわかる。しかし、「子供たちを愛しているし、誇りに思っている。決して虐待などしていないが、それでも、母親になりたくなかった」。こういった感覚があることは、世間にもっと広く知られていいはずだ。

後悔は、誰のどんな人生にもついてまわるものだと私は思っている。なぜなら選べる道は1つしかなく、別の人生を歩んだ自分と今の自分とを比較することはできないからだ。「if」は常に付きまとう。私は40代になってから独身でいたことを後悔するかもしれないが、だからと言って、結婚して母親になっても、後悔と無縁の人生を歩めるとは限らない。

もしもあなたが今の人生に不満を感じているとして、本書を読めば「こっちを選べば後悔しない」みたいな単純な話じゃないんだよな、と思えるはずだ。考えるべきは「後悔しない選択」ではなく、「後悔したとしても納得できる選択」なのである。

Text/チェコ好き(和田真里奈)