勝手にやらしてもらいますね

いつ気づいたのか、どうして気づけたのかわからないけど、私は少しずつその考えが間違いだと知る。「可愛い」に対抗しようと逆張りすることだって、可愛いの奴隷であることに変わりはないのだ。「人にどう思われるかは関係ない」っていう思想の元に、バチバチに人の目を気にして生きていた。ダサい。私はずっと、私自身と二人きりで向き合っているつもりだったけど、全然そんなことできてなくて、自分と向き合う時にはいつも可愛さを評価する世間が介入していた。これじゃあだめだ。自意識が強すぎて俯瞰に回って逆張りかましてたけど、こんなのは偽物の自分らしさだと感じる。じゃあ、私はどうやって生きていけばいいのかって、もうマジで好き勝手にやるしかない。

何もかも自分のためだ。この「自分のため」は「自分のために人に好かれようとする」みたいな意味を一切含まない、純度100の自分のため。今までだったら買わなかった白いニットのミニスカートとか、ちょっと高い石鹸なんかを買い始める。美容院にも行くようになる。私が私にしてあげたいことだから。そうやって過ごし始めたある時、男性に服装を「凄い可愛いね!!!凄い良い!」と言われた。かつての私なら「じゃあ捨てます」とか言いそうだけど、もちろんそんなことは言わない。それは「素直に喜べるようになった」とかってことでもなくて、特に何も思わないのだ。知ってるから。私が私のために選んだ服なんだから良いに決まってる。

ちゃんとした洗顔液を買った。美容液も買った。肌が綺麗と言われる。そうだよと思う。最近可愛くなった? と聞かれる。そうだよと思う。結婚して落ち着いたんだねと言われる。違うよと思う。大人になったんだねと言われる。違うよと思う。私はただ、私を大切にし始めただけ。二人きりの世界を見つけただけ。あってることも間違ってることもあるけどマジでどっちでもいい。私勝手に生きてるだけだから。

可愛いとか綺麗とか、流行ってるとか個性的とか、他人の評価はなんでもよくて、私はただ私にとって健やかなものを手に取る。お気に入りの自分でいようと努力する。それは広告にならない自分磨きだ。私は勝手に生きる。勝手に綺麗にも醜くもなる。日によって違う。28歳の私はきっともっと自分勝手で、その一年は今より楽しい。

TEXT/長井短