「加奈、これから少し乱暴なことをするよ」
男が言った。「いいね? 少し辛いかもしれないけど、耐えるんだよ。それが僕への愛の証だよ」
直後に、男の手が加奈の髪を痛いほど強く鷲摑みにした。
えっ? 愛の証って……何するの?
加奈がそう思った瞬間、男が腕に力を入れた。そして、口いっぱいに男性器を含んでいる加奈の顔を、さらに早く、さらに激しく上下に打ち振らせ始めた。
「うっ……むっ……ぐっ……」
硬直した男性器に喉を突き上げられ、加奈は思わず噎せて、顔を上げようとした。けれど、男はそれを許さなかった。それどころか、一段と激しく、一段と荒々しく、口の中に男性器を突き入れたのだ。(中略)
拷問にも似たその時間が、いったいどれくらい続いたのだろう? やがて、男は低く呻くと、加奈の髪を抜けるほど強く掴んだ。そして、全身を震わせ、男性器を痙攣させながら大量の体液を放出した。
男が髪を摑んでいた手を離し、加奈は精液を口に含んだまま男の股間から顔を上げた。そして、涙の浮かんだ目で、すぐ頭上にあった男の顔をじっと見つめた。
「飲みなさい」
加奈を見つけて男が言った。「それが僕への愛の証しだよ」
精液を飲み下した経験がないわけではなかった。けれど、加奈はそれが好きではなかった。できることなら吐き出して、すぐにでもうがいをしたかった。
だが、『愛の証し』だと言われれば、ほかに選択肢はなかった。
(『愛されすぎた女』P133L8-P136L15)
『愛すること』と『支配すること』がイコールになっている岩崎との結婚生活に、次第に嫌気を感じるようになる加奈。そして物語は衝撃のクライマックスを迎えます。
いったい加奈がどうなるのかは、本編でお楽しみいただくとして、わたしと『許せていない元彼』が迎えたクライマックスは以下です。
束縛は「あなたへの愛」ではない
5年程度の交際期間を経て、互いの親族に見守られての挙式、友人を招いての披露パーティー……をしたところで、ふと目覚め、入籍せずにそれから三か月足らずで別離しました。
土壇場でひっくり返したのはわたしなので、『傷ついたのは彼のほう』であるはずなのに、今だ許せていない。何が許せていないのかというと、そんな元彼の言うことを聞いて、彼からの愛と引き換えに、自分の人生を受け渡そうとした自分がまだ許せないでいるのです。
ただ今、心から言えることは、別れてよかった、ということだけ。
もしもあなたが彼氏の束縛に悩んでいるならば、すぐに別れたほうがいいですよ。束縛は『あなたへの愛』などではなく『彼の性質』。あなたがいくら、『愛の証し』を見せても、束縛されなくなることはありません。
Text/大泉りか
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