常に龍が視界に入ってきて…

彼女は僕の頭にまたがり、アソコをなめてほしいと言う。ご所望の通り舐め続けると「あ~ん、イイ~」状態になったが、常に龍が視界に入ってくる。刺青部分もなめてみたが当然他の場所と感触に違いはなかった。この日は2回だけヤッたのだが、一緒に湯船に浸かっているときに聞いてみた。

「なんで刺青が入っててもいいの? って聞いたんですか?」

長い髪をゴムで結んで湯船に入る彼女が話した内容は、ざっくり説明するとこんな感じだ。

大木さんのことを清楚で真面目な銀行員だと思って付き合う寸前だったり、一晩の関係になるときでも、腿の龍を見た男達はギョッとして「萎えた、帰ろう」と言われることが過去に複数回あった。それ以来、好意を持つ男や彼女とヤりたそうな素振りを見せる男には事前に言うようにしていたのだという。そして大抵の場合は「じゃあいいや……」となるのだ。だが、この日は僕ならば気にしないと思ってはいたものの、いざ直前になると「この人も同じかもしれない」と感じ、直前に言ったというのだ。

「だからニノミヤさんが気にしなくて嬉しかったよ。みんなには黙っててね」

その後、大木さんとヤることはなかったが、飲み会では相変わらず最後は二人でヒソヒソ話をし、その際はこのときの秘め事と刺青のことが我々の共通話題となったのである。刺青に関しては、その女性が見せる普段の姿と結びつきにくかったら男は仰天するものなのかもしれない。逆に、銀行員の男が彫っていた場合、女性はどう考えるのかも聞きたいところである。

 Text/中川淳一郎