放射能により生殖機能がなくなった少年の運命『番犬は庭を守る』

番犬は庭を守る 岩井俊二 幻冬舎 stars alive

  物語の舞台は、原子力発電所が爆発により放射能汚染を受け、生殖器が成長しなくなりセックスできない少年たちが「小便小僧」と嘲られる近未来の世界。主人公は、高校卒業後に警備保険会社に就職したウマソー。彼もまた「小便小僧」の1人です。

 ウマソーは市長邸を警備していた際に市長の娘と恋に落ちます。しかし、そのことが市長に発覚し、罰として廃炉になった原子力発電所を警備することになりました。やがてウマソーの生殖器は完全に失われることに‥‥‥。

 本書は、『Love Letter』や『スワロウテイル』などで知られる映画監督の岩井俊二氏が11年ぶりに書き下ろした小説です。1998年から2001年の間に、チェルノブイリ原発事故をモチーフに書かれたものだったそうですが発表されないまま年月が過ぎていき、2011年から再び執筆されたといいます。

 生殖器を失ったウマソー、大切なものを失っていく人々。それでも人は守るべきものを見つけて生きていきます。苦しい境地に立った人々の生と性の関係性。あなたなら、この世界をどう生き抜いていきますか?

番犬は庭を守る 岩井俊二 幻冬舎

書名:『番犬は庭を守る』
著者:岩井俊二
発行:幻冬舎
価格:¥1,470(税込)

Text/Yuuko Ujiie