地元を愛せない地方ガール達の8つの物語『ここは退屈迎えに来て』

ここは退屈迎えに来て 山内マリコ 幻冬舎 By HidingHeart

  物語の舞台はファストフード化した地方都市。美しい自然が広がるわけではなく、見える景色はチェーン店の看板が永遠に続く国道。独特の文化が根付いているわけでもなく、どこにでもあり得る風景が、そこに住む若者たちの気持ちをげんなりさせます。

 本書は、そんな地方都市に生きる8人の女の子の物語。第1話目の主人公は、震災を機に、1人でいることを不安に思い東京から帰郷した30歳の女性。高校時代にキラキラ輝いていたはずだった男性、椎名と再会するも、彼はすでに“お父さん”になっていました。2話目以降も、椎名を軸に女の子たちの物語が展開されていきます。モテモテだった高校時代から、地方に馴染むことによってキラメキが薄れていった男性、椎名。地方都市の景色と彼を通じて希望を失っていく女の子たち。

 章ごとに主人公の年齢が若くなっていき、最後の主人公は女子高生。まるで、自分の青春時代を回想するかのように進んでいく物語です。R-18文学賞の最終選考に残った「十六歳はセックスの齡」を含む連載小説集。地方で生まれたあなたなら、あのときの記憶がよみがえるかも。

ここは退屈迎えに来て 山内マリコ 幻冬舎

書名:『ここは退屈迎えに来て』
著者:山内マリコ
発行:幻冬舎
価格:¥1,575(税込)

Text/Yuuko Ujiie