生まれながらの“オンナ” 日波里を巡る観察記録『ひばりの朝』

ひばりの朝 ヤマシタトモコ 祥伝社 By ValentinaM-

 あなたは同性に対して、劣等感や嫌悪感を抱いたことがありますか? もしあるならば、その人物はどんな人だったのでしょうか?
手島日波里は、生まれながらにして“女”を感じさせる子供。14歳にして肉感的な体を持ち、彼女に出会うほとんどの男性が性的な感情を抱き、それゆえに女性は悪意に満ちます。

 本書は、日波里が中心人物でありながら、本人が自分について語ることはほとんどありません。日波里を軸とし、周りに存在する人間たちが順に彼女について語るというスタイルを取っています。著者はこれについて「主人公不在の歪んだ主観の物語」と説明しています。

 1話ごとに、日波里に性欲を抱いている男性や片思いをしている少年、コンプレックスを抱く女性などが登場し、彼女について静かに自分勝手に語り物語を進行させていきます。
異性に対する劣情、同性に対する嫉妬心や優越感。あなたには、共感できる?

ひばりの朝 ヤマシタトモコ 祥伝社

書名:『ひばりの朝』
著者:ヤマシタトモコ
発行:祥伝社
価格:¥680(税込)

Text/Yuuko Ujiie