本書は、小説家の村上春樹氏が女性ファッション誌『anan』 で連載していたエッセイをまとめた『村上ラヂオ』『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』に続くシリーズ3作目です。
『anan』といえば、恋する女性たちのバイブルというイメージがありますが、あえてターゲットに寄せることはせず、自身の“書きたいことや面白いと思うこと”を書いたといいます。
例えば女性関係について綴ったエッセイの一部をご紹介します。 「あのとき、やろうと思えばやれたんだよなというケースは何度かありますが、とくに後悔するほどのことではない。やれたけどやらなかったというのは、僕は思うんだけど、いうなれば可能性の貯金みたいなものだ。そういう貯金のぬくもりが、時間の経過と共に、僕らの時として寒々しい人生をじわじわと温めてくれるようになる」
女性はおそらく考えもしないことですが、ちょっと微笑ましくて、男性に対して好感が持てるような考え方ではないでしょうか。
また、男女共通する話題である“年齢“について書いた章では
「いろんなものを失っていく過程ととらえるか、積み重ねていく過程ととらえるかで、人生のクォリティーはずいぶん違ってくるんじゃないか」。 知識については「きっと人にとっていちばん大事なのは、知識そのものではなく、知識を得ようとする気持ちと意欲なのでしょうね」と村上さん流の考え方を明かしています。
日々の仕事やプライベートの疲れで重くなった心をホッコリとさせてくれる1冊。今までわからなかった男性の気持ちがほんの少し読みとれるかも。
書名:『サラダ好きのライオン―村上ラヂオ〈3〉』
著者:村上春樹
発行:マガジンハウス
価格:¥1,470(税込)
Text/Yuuko Ujiie