再会のセックスで感じた違和感
その後、彼はひとつ年上の女の人と付き合い始めたらしいという噂を伝え聞いて、心を痛めたりもしました。通っていた学校を卒業し、上の学校へと進み、それも卒業して就職しても、彼のことはいつも心のどこかにあって、誰と付き合っても「あの人のほうが好きだったな」といつも比べてしまう自分がいたのです。
しかし、再会が訪れたのです。「久しぶりにみんなで集まって飲もうって」と女友達に誘われ、わたしは再び、彼の住む中野を訪れました。久しぶりに会った彼は、外見もしゃべることも、ほとんど変わっていませんでした。そのせいで、過ぎ去った長い時間があっという間に戻ったようにも思えました。
飲み会が終わると、いまは実家を出て、近くで一人暮らしをしているという彼の家に行って、わたしたちはセックスをしました。彼には、付き合っている恋人がいるという話だったけれど、そんなことは気にならなかった。久しぶりに抱いてもらえるだけでよかった……と思っていたけれど、それは、全然違ったのです。
「あれ……なんか……」。
行為を初めてすぐに、違和感を感じました。この人って、こんなに下手くそだったっけ? そう思いながらペニスに手を伸ばすと、やっぱり、ずっと思っていたのとちょっと違う。続ければ続けるほどに、違和感は強くなり、気持ちも体も萎えてゆくばかり。終わった後には完全に後悔を感じていました。向こうがどう思ったのかはわからないけれど、その後連絡が来なかったことを考えると、やっぱり「ちょっと違った」と思ったのではないかと、想像しています。
これ以降、少しでも思いが残ってしまった相手とは、再会するごとにセックスをすることを心掛けるようにしています。すると、不思議なことにあっさりと「こんなものだったか」とあっさりと諦めがつくんです。大切にしてる彼女と、ちょいと懐かしさついでにつまみ食ってみた元恋人とじゃ、セックスにかける“優しさ”が段違い。彼女だった頃に、さんざん優しく抱かれた記憶があるからこそ、別れた後のセックスが、熱や力が入っておらずに、おざなりなことが身に染みてわかる。きちんと終わった恋を成仏させるための手段にセックスは有効なのです。「いい思い出をわざわざ自分で汚す」なんて、愚かな行為だと思う人もいるかもしれませんが、そうじゃないと前には進めない。過去の自分なんざ踏み台にして、進んだ先にしか幸せはないのです。
Text/大泉りか
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