飲み屋で喋っている時に近くの客とガハハハと飲むと、60歳以降のオッサンが過去の性の武勇伝を僕に真剣に話すことがある。同行の友人が「この、ニノミヤさんって人、エロ連載をやってるんですよ!」と言うと「ワシの話を書け!」と言ってくるのだ。
当然本名を書くことはないのだが、この初老の男は自身の若き日の武勇伝をインターネットの世界に残しておきたいのだろう。そして、亡くなる直前、「この記事はワシじゃったのぉ、ワシも元気だったものじゃ」と思いたくなるかもしれないし、遺言として残すかもしれない。だからこそ、僕もそれらオッサンの偉業をここに記す。
B’zの稲葉さんに似たイケメンで…
今回は、とある職人業務をしている蓑田さんの話だ。蓑田さんは、年間で忙しい時期は決まっており、それ以外の時は昼間から街に出て酒を飲んでいる。僕も昼間から酒を飲めるような生活をしているため、時々蓑田さんとは会うのだが、この日はとにかくエロ話をしたくて仕方がなかったようだ。
「ワシが20代だった時の話や、今から35年ぐらい前の話やな。ワシはラグビーや柔道、長距離走など様々な競技で成功したスポーツマンやったんや。やけん、体力には自信があった」
確かに蓑田さんの身体能力は素晴らしく、ある時、街中に出没した鹿に敢然とタックルをし、羽交い絞めにして捕まえた。蓑田さんが捕まえなかったら街中で大捕り物が展開され、畑は荒らされ、児童・小学生は保育園や学校から出られなかったかもしれない。かくして街を救った蓑田さんは地元警察署から表彰をされ、新聞にも登場する街の勇者となったのであった。
こうした身体能力はありつつも、蓑田さんはB’zの稲葉さんに少し顔が似ているイケメンである。
「ワシは若い頃、相当モテたんや。ニノミヤ君、キミとは比較にならんほどな、ガハハハハハ。ワシがラグビーの試合に出ると、女の子が観客席に陣取り、ワシにキャーキャーと声援を送ったものじゃ。そして、試合が終わるとワシにプレゼントを渡す列ができたほどだ」
そう僕に対してマウンティングを仕掛けてきたのだが、酔いが深まると話は混迷を極めてくる。
「ワシは福岡のディスコによく通っておったんやが、当時の男どもはナンパをするのが目的やった。しかし、ワシはナンパなんてしたことはなか。何せ女が勝手にワシを逆ナンするんやけん」
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