今だからこそ改めてモテについて語ってみない?/長井短×紫原明子対談

「ねぇ、あの娘いつもちやほやされてるけどそんなに可愛い?」から始まった、“わかる〜〜〜!!!”が止まらないAMの人気連載『長井短の内緒にしといて』がついに書籍化。
発売を記念して著者の長井短さんと、エッセイストの紫原明子さんに「モテ」についてとことん語り明かしていただきました。

右:長井短さん 左:紫原明子さん

変顔で写真に映ることで比べ合いから逃げてた

紫原

『長井短の内緒にしといて』書籍化おめでとうございます! 連載が始まった当初からすごい面白い人を見つけてしまったなと思ってたんです(笑)。

長井

わあ〜! ありがとうございます。

紫原

疑いようもなく魅力的じゃないですか。それなのに、モテないと公言しているのが不思議です。昔からモテたいと思ってました?

長井

高校から本格的にモテたいと思ってましたね。中学は「男とか女とか言ってんじゃねーよ!」みたいな空気があって、変にモテようとしてスカした子は浮いちゃうから、モテたい本音を認めないようにしちゃってました。

紫原

長井さんが高校生の頃はどんな子がモテてたんですか?

長井

男友達が多い子よりも、女の子同士で群れている子の方がモテてました。男子から見ると面倒臭くなさそうなところが受けるんですかね。蓋を開けたら女子は大体面倒臭いですけどね(笑)。

紫原

私の場合は女子高だったし、しかも在学中にたまたまできた恋人と同棲を始めて卒業直後に結婚したから、自分が本格的に恋愛市場で勝負した経験があまりなくて。でも小学生くらいから、ばっちりお化粧してる可愛い子と、すっぴんで顔がパンパンの自分を比べて、「どうせ私はブスだしモテない」みたいな自意識だけを育んでましたね。

長井

今思えばスッピンの子の方が年相応で可愛いんだけど、その頃はばっちりメイクの女の子たちがキラキラして見えるんですよね〜。

紫原

あと食い入るように見ますよね、可愛い子。あの子の眉毛どうなってるんだろう? って観察したり、二重に憧れてアイプチに挑戦したり、りんごダイエットしたり。モテたいからなのか純粋に可愛くなりたいからなのか、両方の圧に中高時代は苦しんだなって思います。そんな私にとって、長井さんはカースト上位の女の子っていうイメージなんですよ。

長井

え〜本当ですか〜!

紫原

長井さんは写真に映る時あまり笑わないじゃないですか。それができるってすごいですよ。私は、せめて愛嬌くらいよくしとかないとという呪いからなかなか解放されないですね。笑うのは自信のなさの裏返しというか。昔から笑わずに映れました?

長井

むしろ笑うのがキツくて。可愛がられるタイプの人間じゃない私が笑ってもな……みたいな(笑)。可愛い子たちに合わせて笑顔で映ると、比べられちゃうからプリクラでも端っこで変顔してましたね。そしたら、ちょっと長井なんでそんな顔してんの! キャハハハ! で終わるので。比べ合いから逃げてたんだと思います。

紫原

同じ場所に並ぶのもそこから降りるのも、どちらも勇気がいることですよね。どちらにせよ我々の周りには謎の同調圧力がいつもある。でも一度は他の女の子と同じ場所から降りた長井さんが、再びモデルという選ばれる市場に上がった理由は何だったんですか?

長井

最初はシンプルに、他のバイトが本当に受からなくて始めたんですよ(笑)。8個くらい落ちた時に、たまたまZOZOTOWNのオーディションを見つけて。それは落ちたんですけど、オーディションを見にきていた事務所の方から声をかけていただいて、モデルの世界に入りました。

紫原

だけどモデルさんってモテるのでは?!

長井

赤文字系・青文字系みたいな、可愛くて男受けする服を着るモデルだったらモテたと思うんですよ。でも私が着るのは、これ服!? みたいなタイプのものが多くて(笑)周りにも可愛さをウリにしているモデル仲間がいなくて、誰よりも個性的な人が勝ち! みたいな世界でしたね。

紫原

長井さんが出ているのは『装苑』とかですよね。たしかに、「それ服!?」って服、載ってますね(笑)。でも、そういった個性的な雰囲気の女性と合いそうな個性派クリエーターとか、いっぱいいそうなのに。

長井

私もそういう方たちとお近づきになれるものだと思ってたんですけど、実際は全然飲み会とかなかった(笑)。当時極端に人見知りだったので、連絡先交換しましょうよとか、ご飯行きましょうよって言えなかったんです。

――逆に、お2人にとって、実はあの時めちゃくちゃモテて楽しかった!イェーイ! みたいなエピソードってありますか?

紫原

私は離婚直後ですね。モテたっていうか、それまで一度も市場に出たことがなかったから、男の人はどうせ私みたいな女嫌いなんでしょって勝手に卑屈になってたんだけど、意外と世界は優しいと気づいた(笑)。

長井

意外な場所に自分が輝ける舞台があったりしますよね。私は外国人受けがいいみたいで、六本木の外国人しかいないカフェバーに行った時はすごい声かけられました。「Hey!Girl!」みたいな感じで(笑)。完全にお祭り状態。

紫原

その話を聞いて思い出したんですけど、私もラテン系の男性からのウケめちゃめちゃいいです。おしりが大きいからだと思う。原宿の竹下通りを歩くと身の危険を感じます。

長井

やっぱり嬉しいですよね。どんなに日本人の男性から雑に扱われても、私はワールドワイドでちやほやされましたから!