『グレート・ギャツビーを追え』の魅力的な登場人物たち

『グレート・ギャツビーを追え』は他にも、「新人作家の犯すもう一つの間違いは、第一章で二十人の登場人物を紹介することだ。五人で十分だ。それなら読者の頭も混乱しない」(p.336)など、創作のヒントをキャラクターたちが会話の中で教えてくれる。“人間”を作るって難しくて、ほとんど魔法みたいだなと思うけど、でも決して神の所業ってわけでもない。コツとテクニックを磨けば、たぶん私たちにも“人間”は作れる。それが商業作品として成功するかしないかはまた全然別の話だけど……。何より、この『グレート・ギャツビーを追え』自体の、主人公の売れない女性作家や成功している独立系書店経営者の描かれ方が、とても魅力的だ。彼らは一人の人間として、仕事や性生活に苦悩している。

私も20代のときはまさか魅力的と思う人の条件に「“人間”を書ける人」なんて上げなかったと思うが、さてあなたはどうだろうか。この年になると共通の価値観みたいなものはどんどん減っていくけれど、それはやっぱり、各々で人生が豊かになっていくからなのだろうと思う。『グレート・ギャツビーを追え』を読みながら、自分はどんなキャラクターに魅力を感じるかを考えてみるのも、けっこう楽しいかも。

Text/チェコ好き(和田真里奈)