ドラマの脚本を書いたり、AMで飲みながら恋バナを聞くコラムを書いたりする舘そらみ(ダテソラミ)と言います。慣れない土地が好きで、いろんな土地をウロウロもしています。
「そらみさん、次東京にいるとき、ビッチと飲みませんか?」と編集部から連絡があった。「わわ、ビッチと飲みましょう」と即答した。
即答なのに「わわ」を文頭につけてしまったのは、ビッチという存在をあまり考えたことがなかったから。そうして、彼女と会うことになった、令和元年晩秋のこと。
新宿の居酒屋に現れたビッチは、今年から国内メーカーで営業職として働く22歳のあみちゃん。
黒い髪を無造作に結び、ナチュラルメイクで少し田舎っぽい風貌。「私という人間がどう見えてるか、教えてほしくて来ました。よろしくお願いします」とんでもない真面目感を漂わせながら、丁寧に挨拶をしてくれた。
AMによる、令和一発目の記念すべき特集「令和ビッチのゆくえ」。
いきなりマクロに“ゆくえ”を考えるのも大変。ってことで、今回は1人のビッチに接してほしい。
処女と言われても納得するような雰囲気を持つあみちゃんは、経験人数300人、セックスが好きすぎてソープ嬢にまでなった、レベルが段違いのビッチだった。 ここから、セックスの話がたくさん出てきます。
はじまりは中学生
神奈川県に生まれたあみちゃんは、「普通の家庭の、普通の女の子だった」と昔を振り返る。勉強はー?とか、部活はー? とか気軽に聞いてたら、
「中2で同じ弓道部の女の子と付き合いだして、同時に他の部員の女の子ともヤっちゃって。気まずくて部活は辞めちゃいました」
急激に話が飛び跳ねた。人間はだから面白い。
「告白されて、“面白そう” と思って付き合ってみたんです。キスしたりおっぱい触ったり、下半身触りあったり普通にしてたら、他の女の子ともついそういうことしちゃって。揉めちゃいました」
元々女の子が好きだったの? と問うと、「ではなかったです。でもBLとか百合とか好きだったので、面白そうだなーと思って」と真面目な顔で答える。それがはじめての恋愛です、とあみちゃんは続けた。
あまりの真面目な顔と落ち着いたトーンにこっちが面食らう。
元々男性が興味の対象ではあったあみちゃんが、男性ともそうなったのは中学校3年生の時。恋愛してみたいしセックスもしてみたい。そんな、中3らしい欲望を、行動に移した。
「ツイッターで出会った、学校の近くに住んでた大学生とヤッたのが、はじめてです。ツイッターでしばらく会話してお茶をして、家に行きました」
近所に住む大学生と、初体験。そしてそれは、楽しい時間だった。
新しい人たちとツイッターで会い続け、経験を重ねていく。高校生になってもその生活は、日常のように続いた。
「本当に純粋に、男とヤリたかったんです。将来とか悩みはあったし、喋ることもあまり得意じゃない。でも、ちんこを触りちんこをしゃぶることだけは、繰り返してきました」
“ちんこを触りちんこをしゃぶる……”
思わずその語感を復唱しながら、私自身も中高時代の漠然とした性欲を思い出していた。あまりにも未知なる性衝動に、あたふたしていたように思う。男のこともセックスのことも分からないし、何を基準に恋愛を紡いでいっていいかも分からず、とりあえず目の前の波に乗り、なんとか乗りこなそうとしていた。そう思うと、あみちゃんの行動の原動力は、なんだか理解できる気がした。ここまではね。
好きで、ソープ嬢に至るまで
大学に進学し学内でセフレを作り、時には彼氏を作り、あみちゃんはセックスに励んでいく。そして、就活が終わった頃、好きが高じてソープで働き出した。
「何の駆け引きもなくドンドンヤれることが、ほんと肌に合ったんです。1日4、5人と超集中してヤるから、それ以外の時間はずっと爆睡。とにかく、楽しかったなあ……」
楽しかった、を繰り返す。風俗だとお客さん選べないし、嫌な思いとかなかったの? と聞くと、あみちゃんはゆっくり首を振る。
「私、誰とでもヤりたいし、全員と楽しめます。その人のどんな特徴も、全部興奮材料になるから。なんなら、今この店にいる人全員とヤレます。ヤラシていただきたい」
ヤラシていただきたい、と謙虚に言ってんじゃないよ、と思わず突っ込む。
「ソープは本当に本当に楽しかったけど、若いうちしかできないから、将来を思い就職しました。今は新入社員なので余裕ないし、でも落ち着いたら絶対、絶対に副業として風俗を再開します」
と、悔しそうに言い、楽しかった、楽しかった、と繰り返す。1人の男(彼氏とか)とだけヤるのとは違うの? 彼氏の方が思いがあるから気持ち良いとかはないの? と聞いてみた。
「彼氏とセフレとお客さんは、身元の確かさが少しずつ違うくらいで、全部例外なく気持ち良いです。それに1人の男だと時間的にも体力的にも限界があるから。嫌が応にも複数人必要ですよね」
「今はソープできないんで、オナニー1時間しないと眠れなくて困ってますよ……」と、ものすごく寂しそうな、雨に打たれた子犬のような愛おしさで呟いた。
もう!
もう!
もう!
私は、気づいてしまっていた。ああ気づいてしまっていた。
あみちゃんの、そこまでの「ヤりたい」が分からない。なぜならば、きっとあみちゃんは、私が知っているセックスより遥かに、気持ちの良いことをしている!思いとか関係なく、常軌を逸した肉体的な快感を味わっている。どんなだよ、それ!
セックスは気持ちよくて気持ちよくて、たまらない
「相手のうまさ関係なくどんな状況でもいつでも、中イキできるようになってからやりたくてしょうがなくって。頭の中、セックスしかないです」
いつでも? 誰とでも、イケる……中で??そんなことありますのん……?
「他のことを考えずに、とにかくセックスに集中すると、イケます。ちなみにイキやすくなったのは相手の力ではなくて、自分の努力ですね。勉強して試行錯誤して、自分の癖を把握して、自己開拓しました」
まるでたった今気持ち良いかのように、思い出し快感(そんなのあるのかよ)に顔を少し歪ませながら語気強く教えてくれる。
「だって、セックスって、とにかく気持ちいいじゃないですか。最高じゃないですか」
そうですね、と答えようにも私の「気持ちいい」とは段違いのことを言っている気しかしなくて、「それって、どういう風に気持ちが良いのでしょうか……」と弱い声で問うてしまう。
「なんだろ。もう集中しちゃってるんで、Gスポットにいかに当てられるかしか考えてないかもなぁ。あ、だから、ちんこは長さですね。太さも固さも要らない、私は長さです」
肉感的な言葉ばかりが次々に紡ぎ出される。どんな偉人もそうだ。具体的な事柄をしっかり捉え励んでるからこそ、具体的事象しか口に出さない。“もっと包括的な言葉を……もっと精神論的な言葉を……”が欲しくなってしまうのは、全くもって素人だ。そんな言葉を欲しがる奴は、結果努力をしねえ。すいません。
「本当にただ、セックスがしたいのです。だって、気持ちが良いから。どうやったらこの人のちんこを舐めれるかなって、上司と話しながらも友達と話しながらも、そればかりを思ってます」
圧巻だ……。「このあとハプニングバー行くけど行きます?」と満面の笑みで誘ってくれる。その屈託のない笑顔、かわいい。しかし……!
私は困っていた。「令和ビッチのゆくえ」は、“自分の性は自分でコントロールしていこうね、変な呪縛から解放!”と締めるのだと思っていた。
でもちっとも、締められねえ。目の前の令和ビッチのセックス度が高すぎて安易なことが言えねえ。
オリンピック選手に「100メートル10秒切ると、世界は止まって見えるよ」とか言われても(知らんけど)、「よし、走ってみよう!」とはなりにくい。ここは、オリンピック選手よりもっと下の、クラスで1番足が速い、くらいの人が必要だ。そう、超越してないビッチを……ああ、どうしよう悩む。実はいるのだ。ものすごく身近に……。
てことで、すいません、急にでしゃばります。裏方がすいません、私、平成のビッチです。ちょっと援護射撃します。私を通して、あみちゃんとの距離をどうか縮めてください。