一応この連載は夫婦コラムだし、夫婦ネタを書こうと思うのだが、いつもネタに困るのだ。
夫婦共に40代で結婚13年目ともなると、特に事件も起こらない。
そこで担当アサシン嬢に「なんか夫婦ネタないですか?」と聞くと、
「最近のネタとしては、夫がよく替え歌を歌っていて、私は合いの手を入れてます。\ちんぽマ~ウス/\トゥルルル~/\ちんぽちんぽちんぽマウス/\ハイハイハイ!/みたいな」
平和である。
家庭は平和が一番であり、ドラマは二次元に求めればよい。
JJ(熟女)はブランコを漕いでも嘔吐するお年頃、ジェットコースターみたいにアップダウンが激しいと心停止してしまう。
わが家も基本的に平和で、私と夫はめったにケンカをしない。
子どもがおらず、お互い好き勝手に暮らしていることが大きいだろう。私は外食や旅行は女友達と楽しむ派だし、夫も多趣味で好きなことに邁進している。
だがケンカをしない一番の理由は、やはりマッチングだと思う。
私も夫も完璧とはほど遠い、デコボコだらけの人間だが、割れ鍋に綴じ蓋でマッチしている。
たとえば夫は家事スキルが低いが、私は特に不満はない。こちらが指示したことはちゃんと遂行するし、私自身がガサツで大雑把なので、細かいことは気にならないからだ。
「記念日を忘れる」といった理由でケンカするカップルもいるが、うちは夫婦そろって忘れている。12/31が結婚記念日なのだが、先月も七草粥を食べながら「あ、そういや結婚記念日だったね」と7日後に思い出した。
人にはそれぞれ「許せること、許せないこと」があって、そこが合っているかがカギなのだろう。
私が許せないことは、差別や男尊女卑である。夫はその地雷を踏まないので、わが家の平和は保たれている。
夫は変人だが、弱い立場の人間や動物に優しい、仁徳のある変人なのだ。会社でも上司のパワハラから部下を守っているため、全然出世はしないが、私はそんな彼を誇りに思っている。
また、夫は痴漢のニュースなどを見るたびに「日本は性犯罪に甘すぎる!」と怒っている。
「痴漢は自動小銃で撃ち殺せばいい」とも言っているので、自動小銃で撃ちたいだけかもしれないが。「ベルギーでは銃が簡単に購入できる」という報道を見て「俺も買いにいこかな」と言っていた。
そんな夫は何度か痴漢を捕まえているし、路上で彼氏に殴られていた女性を助けたりもしている。去年も女子中学生にわざとぶつかるオッサンをタックルで仕留めていた。
近所の小学校の近くに変質者が出た時は「パトロールに行ってくる」と黒ずくめの服装で出かけようとして「お前が捕まるぞ!」と慌てて止めた。
彼はけっして女の味方ぶったりしないが、女性に対してまともな敬意を持っている。
バラエティ番組で、お笑い芸人がオリンピックの柔道の女子選手にデブいじり的な発言をしていた時も「そんなこと言うな、体重増やさなあかんねん!」と怒っていた。
テレビで吉田沙保里がセクハラ的ないじりをされるたび、私は「女性アスリートをバカにするのもいい加減にしろ! それをダルビッシュや羽生結弦にも言うか? 吉田沙保里はお前なんか一秒で殺せるんやぞ!」とバチギレているが、夫は彼女を大変リスペクトしている。
バラエティ番組を見ながら「吉田沙保里はこういう場所でも全くすきがない、さすがだ」と感心する夫を見て、私は「この人と結婚してよかった」と惚れ直している。初老のノロケに嘔吐している人がいたら申し訳ない。
しかし先日、事件が起こった。
私にとって最高のパートナーである夫に「もう離婚する!!」などと口走ってしまったのである。