ナンパの本当の実りはセックスをした後…
SNSで自慢することが喜びではいつまでも幸せになれない

─その男性はシェアすることで、自身のナンパの内容よりも、周囲に知らせることに重きを置いているのですか?

宮台:たぶんそうです。自慢できている瞬間が濃密であり、仲間に承認されていると思えることが濃密であるような、〈内在系〉の構えです。
そうした若い男がとても増えていると感じます。その理由は、ナンパデビューの遅さにあると思います。

 そういう場合、ナンパできるようになることが、ある種の自己啓発になってしまいがちです。
「ワンランクアップすること」や「一皮剥けること」を目的に、キヨミズの舞台から飛び降りるが如き覚悟で、ナンパ塾にやってくる若い男が多いんです。
 ナンパ塾に来れば、数ヶ月もすれば〈前半プロセス〉のスキルが上がります。
すると「俺はこんなにすごくなったんだ」となり、それを人に認めてもらいたくなっちゃうんです。そうじゃなく、女との濃密な関係性を作るところにいけよ、という話。

 ナンパの実りは、セックスに至るまでの〈前半プロセス〉より、セックス以降の関係性を作る〈後半プロセス〉にこそあります。
実況男子は〈前半プロセス〉にしか意識が向いていない。実況ログを女が見れば〈後半プロセス〉が阻害されるでしょ?

 リアルな男女関係といったって、そうしたナンパの頽落に象徴されるような、つまらないものが多くなっています。
だから、彼氏がいたり、夫がいたりする女ほど、ナンパしやすくなっているんです。

 希薄な関係しか構築できない男に限って、女の歓心を買うために、一所懸命に質問して、ニーズに応えようとします。意味がない。
そうでなく、女が知らない「こちらの世界」に巻き込んでこそ、女に〈輝きに満ちた眩暈〉を与えられます。
 その意味で、マーケティング用語を使えば「マーケットイン(巻き込まれ)」よりも「プロダクトアウト(巻き込み)」が大切で、それをもたらすには、外的な言葉への反応を見る「質問」よりも、相手の内的な構えを取得する「内観」が大切です。