“フツウの幸せ”のハードルを下げると“都合のいい女”に!

 その証拠に、自分以外の女性や男性にはキラリと慧眼を発揮する江古田ちゃんですが、こと自分の恋愛となるとあやまちばかりを犯しています。

 行きずりの男性を食ってしまうことが多く、身持ちはゆるめ。
猫かぶりしていた人格に惚れられてしまった「信者くん」に付きまとわれたり、日本の文化・風習を見下しがちなアメリカ人のサムに気をもんだり……。

 とくに、江古田ちゃんにとっての本命・マーくんには、遠距離恋愛中の彼女をはじめ複数の浮気相手がいます。 決して彼の「一番」になれる気配はないのに、誘われるままに夜をともにしてしまう江古田ちゃん。
マーくんがそっぽを向いて寝るとなりで、彼女が物思いにふける場面は毎回切なすぎる名言の連続です。

「どういう気持ちになれば『恋』なんだっけ」
「だって『思い』は『重い』だから」
「『あのとき見捨てられたんだ』ってあとから気付くようにそっと見捨てるつもりだからね」
「涙の数だけ鈍くなれるから」
「よそ様のものを盗み食ってる背徳感と優越感がこんなに快感を高めるなんてね」
 江古田ちゃんほど聡明な女性が、なぜ本命になれる望みもないマーくんとの関係をいつまでも断ち切れないのでしょうか。
それは、江古田ちゃんの以下のセリフに集約されているような気がします。

「大事にされた経験ないから今がものすごく不幸だとも思えないんだ」

 自己評価が低いために、「自分の好きな人が、同じように自分を大事にしてくれる」成功体験がなかなかイメージできない江古田ちゃん。
彼女もまた、“フツウの幸せ”のハードルを低く設定することで、現状に甘んじてしまっている女性だったんですね。

 物わかりがよすぎるために、かえって“都合のいい女”になってしまうのも“フツウ恋愛”の罠。
あなたが思っている“フツウ”は、世間の“不幸せ”かもしれません。
みなさんも、「江古田ちゃんのフリ見てわがフリ直せ」を肝に銘じて、“脱!フツウ”を目指してみませんか?

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書名:『臨死!! 江古田ちゃん』
著者:瀧波ユカリ
発行:講談社
価格:¥550(税込)

Text/Fukusuke Fukuda