岡崎京子が描く恋の世界『恋とはどういうものかしら?』

 7月に公開される映画『ヘルタースケルター』の原作者であり、現代文学にも影響を及ぼしたといわれる天才漫画家・岡崎京子の世界が詰まった、恋愛がテーマのオムニバスコミック。
単行本未収録のもののみを集めた作品ですが、バランスよく編集されていて、まるですべてがこの短編集のために描かれたのではないかというほど。

 東京で働く女性の恋の始まりと終わりを描いた『東京ラヴァーズ』、恋人を殺してしまった…『HUMMING BIRD』、そして、シングルマザーの朝の食卓や、駆け落ちを諦めたふたりなど様々な男女の朝の7時を綴った『東京は朝の7時』を含めた24篇の恋愛漫画が収録されています。
 例えば『初恋・地獄編…またはヨーコと一郎』は1個年下の幼馴染に恋する女子高生、ヨーコのお話。
モテモテで遊びまくっていると、陰で噂されるヨーコ。だけど本当は一途に年下の彼を想っています。ただ、想いの伝え方がストレート過ぎていつもかわされてしまう。
ある日、愛しい彼とその彼女がキスをしている場所に遭遇してしまい、自暴自棄に。それでもやっぱり彼が好き‥‥‥。
なぜかほとんどの人がうまくいかないといわれる初恋の苦しさを、ふと思い出させる作品です。
 軽妙な冗談にくるんだと見せかけて、ヒリヒリと心に迫る恋愛の短編の数々。
行き詰まった恋や、途方にくれるような恋にこそ真実があるというような、岡崎京子の世界をぜひ味わってみてください。

書名:『恋とはどういうものかしら?』
著者: 岡崎京子
発行:マガジンハウス
価格:¥1,200(税込)

Text/Yuuko Ujiie